カテゴリ:読書
「くだらない」と一言で語れない。
それが「つきのふね」。
人間は面倒だから植物になりたい。 主人公さくらでなくても、そう思った人はたくさんいるだろう。 似た話は、きっと世界中に存在しているはず。 前向きになれず、「生まれ変わったらプラナリアになりたい」。 そんな主人公もいた。 山本文緒「プラナリア」 中学生はネット上で「厨房」と呼ばれる。 幼い行動を揶揄するための言葉。 だが、中学生にも悩みはある。 その重みは大人より重い場合も当然ある。 石田衣良は「4teen」で中学生男子の世界を描いた。 性があり、生もある。そして笑いがあり友情がある。 森絵都はこの作品で、女子中学生の友情を描いた。 万引きがあり、禁止薬物への誘惑もある。 人は、人を嫌いにはなるが一人では生きられない。 どこかで人を求めてしまうもの。 ネットの2ちゃんねるやmixiが受け入れられるのは、人の弱さがあるから。 誰かとつながっている安心感。人はどこかでそれを求めるもの。 盗っ人のさくらは万引きの世界から抜け出せた。 それは、ずるいからなのか。 それとも勇気があるから? 今、この瞬間にも万引きをしている中学生がいる。 友だちに誘われて、やめたくてもやめられない子がいる。 そればかりか、援助交際という名の売春に誘われている子もいる。 シンナーやMDMAなど、禁止薬物を手にする子もいる。 薬物問題に詳しい水谷修氏。 彼は講演でこう言っていた。 「薬物は先輩から、友人から蔓延することが多い」 そうした中学生たちのことを考えれば。 この作品は、稚拙な現代文の古文書に笑ってばかりもいられない。 ノストラダムスの大予言を懐かしがるのも少しの間だけ。 さくらは実際の人物ではないが、多くのさくらが日本中にいる。 その子たちは夜も悩み、苦しんでいる。 勝田くんのキャラクターは女性作家独特の視点。 高橋留美子が「めぞん一刻」で五代の性欲を描けたのはすごい。 この作品を読んで、改めてそう思う。 石田衣良だったら、この作品をどう表現したか。 重松清だったら?梨木香歩や角田光代だったら? 作家のよる違いを想像するのは楽しいことだ。 問題があるとすれば、放火魔のこと。 描き方と処理の方法が唐突。 というより説明不足。 次にこの作家の作品を読むとしたら。 「永遠の出口」になるのだろう。 *********************** 関連記事 この作品は、感想を読むのが面白い。 つきのふね/森絵都(小説) 「つきのふね」 森絵都 つきのふね(森絵都) つきのふね 森 絵都 ***********************
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最終更新日
2010.07.20 18:43:45
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