カテゴリ:読書
不思議と今まで読んでいない本。
私にとってそれが「夜のピクニック」だった。(この記事はネタばれあり)
進学校である北高には修学旅行がない。 その代わりにあるのが「歩行祭」という行事。 これは、全校生徒が80キロを24時間かけて歩く。 男女関係なく、脱落者はバスで収容されるという厳しいルールだ。 高校3年生の甲田貴子には歩行祭に秘めた想いがあった。 それは病死した父親が同じの西脇融とのこと。 3年で同じクラスになった二人だが、かなり気まずい状況。 まったく会話がなく、視線も厳しい。 興味深いのは、人は極限になると正直になる点。 「非日常」を作り出すことこそが、歩行祭の本質。 高校生の登場人物たちは、いろいろな想いを持ってこの行事に臨む。 この作品を読んでいて思い出したのがあだち充の「みゆき」。 事情は大きく違うが、根底にあるテーマは似通っている。 私が知らないだけで、血のつながりが多くのドラマを生んでいるはず。 それはもちろんギリシャ悲劇のような不幸なドラマをも含む。 少し残念だったのは、融の描き方。 「女性が考える高校3年生の男子」から脱していない。 リアルな世界では、こんなドラマはまず起きない。 高校時代、仲が悪い奴とはまず関係を修復できない。 遊佐美和子や戸田忍という貴重な友人もまず出会えない。 だが、読者は貴子たち登場人物と一緒に歩く経験を得る。 多くの人が経験できないことを物語で体験させる。 それは小説や映画の王道と言っていい。 今はこの作品で描かれる時代とは違っている。 作品に携帯電話は出てこない。 もしこの作品でメールがあれば。 遠くアメリカにいる友人とも意思の疎通が可能だ。 話の中に「ナルニア国ものがたり」が出てくる。 私はこれも読んでいない。機会があれば読んでみよう。 「前に読んでおけばよかった」と思う本。 多くの人にたくさんあるはず。私も何回か経験している。 その人にとって、読んだ時を含めた「運命」がある。 後悔するということは、それだけ救いがあるということだ。 何しろ、多くの人は後悔すらできないのだから。 この作品は、05年(第2回)本屋大賞受賞作。 本屋大賞といえば、08年の「ゴールデンスランバー」を思い出す。 この賞、私にとっては次に読む本を決める参考になっている。 06年「その日のまえに」と「容疑者Xの献身」が受賞を逃しているのは意外。 *********************** 関連記事 「夜のピクニック」恩田陸 夜のピクニック<恩田陸>-(本:2007年33冊目)- [恩田陸] 夜のピクニック 『夜のピクニック』恩田陸 恩田陸著。「夜のピクニック」 恩田陸 『夜のピクニック』 「夜のピクニック」 恩田陸 恩田陸『夜のピクニック』 夜のピクニック 恩田陸 『夜のピクニック』 モデルがあったんですねぇこの作品に 私が思い出したのは、和敬塾の山手線一周ハイキング。 和敬塾は村上春樹が学生時代、一時過ごしたことでも知られている。 塾は「ノルウェイの森」のモデルとなっている。 また、早稲田大学の100キロハイクもある。 *********************** ※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。 バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.02.07 21:29:50
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