単独捜査
「単独捜査」(ピーター・ラヴゼイ)を読みました。ピーター・ダイヤモンドのシリーズ第2作。このシリーズのファンの評価は低めのようです。分からんでもないですが。私はこの作者が好きなので、ププッと思いながらそれなりに楽しみました。今回は異色づくめ。でも前に読んだ「ミス・オイスター・ブラウンの犯罪」という短編集では、こんなことも考えられるよ、こんな人も使ってみたよ、とあの手この手で楽しませてくれました。いろんなことを次々やって見せるのもラヴゼイならでは、なのかもしれないという気がしました。いつもと違うところはいろいろあります。たとえば、舞台がバースではなくニューヨークや東京にまでやってくるところ。またダイヤモンドはいつも聞き込みや尋問といった人とのやり取りなどから解決を導き出そうとしますが、ニューヨークにいるときはトラブルを何度か起こすものの最終的には、科学的手法や形式にこだわる警察の指示に従います。さらに、文章だけでなく簡単な絵を謎解きのヒントに用いているのも面白い試みです。また、今回は医薬品業界を扱い産業小説の趣きもあって、なんとなくウォーショースキーが登場しそうな気がしてしまいました。エイヴォン・アンド・サマセット署では警視として活躍していたけど、組織を離れて何者でもなくなってしまったら、いつもと勝手が違ってサってことかな。ま、それはいいとしてやっぱり日本人が笑っちゃうのは、ミスタ山形。日本人じゃなくても笑うでしょうが、今の日本にミスタ山形が実在するなら探してっ!といいたくなります。こんなに強くて人気のある力士はいません。ひと昔ふた昔くらい前の日本を、少し作者は知っているのかもしれません。あと、ジャンタックというのは日本を舞台に使ったことからお遊びで使ったのかな。ま、どうでもいいけど。個人的には、医薬品業界の話は大変興味深いものがありました。効果と副作用とか。倫理観とか。新しい薬一つ、医療機器一つで、人の人生が大きく変わります。そこには大きな可能性もあるし、危険性もあります。私はよく、昔見た「ロレンツォのオイル」という映画のことを思い出すことがあるのですが、この本を読んでて、また思い出しました。脳の世界も最近関心があるので面白かったです。タイトルの「単独捜査」の原題は「Diamond Solitaire」。ほんとダイヤモンドの孤軍奮闘がキラッと光ってます。デブで不器用で厚かましいオッサンだけど、情の厚いピーター・ダイヤモンド、あっぱれです。