ハロウィンの憂鬱(文章)
「お菓子…いる?」 ニヤリと笑って水上さんが、オレンジ色の袋に入ったお菓子、を俺の目の前にぶら下げる。「なに…急に…」「知らないのお前?ハロウィンだろ。」 あ~そういえばそんなお祭もあるよね…「ありがとうございます。」 目の前のお菓子に手を伸ばそうとした俺の手をピシャリとたたく。「あっ…いたぁ…」「ダメだろ尾張君!いいかい、トリック・オア・トリートというのが決まりなんだ。」 ふふん!と得意げに話すあなた。 なにそのしゃべりかた…「そういえばそうでしたね。意味はなんでしたっけ?」 待ってました!と言わんばかりに目をきらめかせる。 そうじゃないかと思ったよ… 訊いてよかった…「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!」「ふ~ん…」 本当は知ってたけどね、水上さんがここまで嬉しそうにしゃべるのが嬉しいというか…「なんだよ、その興味ありませんつー答えは!」 あらあら、怒らせちゃった? キラキラの目から一転、拗ねた顔に変わってしまう。 俺の受け答えが素っ気無いのなんていつものことでしょ? ここはちょっと話しに乗って悪化するのを防ぎましょうか…「ハロウィンって昔からあったっけ?なんだか最近、騒ぐようになったよね?」「ん~そういえばそうだな~」「クリスマスとかヴァレンタインと一緒で企業戦略??」「夢がね~のなお前。」 企業戦略のイベントに夢もへったくれもないと思うけど… まぁ…ますます機嫌を損ねることになるから言わないけどね。「コーヒー飲みます?」「お~くれくれ~♪お前んとこのコーヒーうまいからな♪」 ……本当のところを言うと… 世間じゃ堂々と恋人なりなんなりを誘えるイベントを、片思いの人と楽しめない僻みがあるわけ…俺とあの人は…俺の大好きなあの人とイベントを楽しめる関係じゃない。 企業戦略だと思って毎年毎年、ふてくされるしかないの俺…「尾張~何かうまいお茶菓子も~」「はいはい…」 本当に…こっちの気も知らないで… 水上さんに気がつかれないように、小さくため息をつく。 やれやれ…また一つ憂鬱なイベントが増えてしまった… 自分の家のようにソファでくつろいで上機嫌な水上さん。 あなたのお気に入りのコーヒー豆がガリガリと音をたてて粉末になるのを待つ。「ああ、そうだ、水上さん。」「ん~?」「俺、お菓子をもらうより悪戯するほうがいいです。」 これで…せめて少しでも憂鬱な気分が晴れますように…なんてね…あとがきハロウィンて私が小さい頃はそんなに大げさに何かをするってことなかったと思うのだけど…でも、恋人達のイベントってよりかは、子供のイベントって感じかなぁ~以前書いたコーヒーメイカーの尾張と水上さんでおおくりしました(^^;