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西條剛央のブログ:構造構成主義

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西條剛央

西條剛央

2012/12/07
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カテゴリ:東日本大震災
【「避難行動」はいつか助かるための“生存行動”と認識しよう 〜東日本大震災の教訓を活かすために〜(シェア拡散希望)】



河北新報社の方に大川小の研究や今後の防災の話をしていたら長い横揺れ。

揺れ方があの日と似ている。嫌な揺れだ。

津波警報発令。

否が応でも、あの日を思い出す。

少し落ち着いてから南三陸や石巻の方に連絡してみたところ、みな高台に避難し終えたとのこと。適切な「生存行動」だ。

巨大地震がいつ起きてもおかしくないんだということをあらためて認識した。


 
未来の命を救うことはできる。二度と悲劇を繰り返さないためにも、失われた尊い命を無駄にしないためにも、ぼくらは東日本大震災から学ばなければならない。

あの日、時間が経っても津波がこないからもう大丈夫だろうと家に戻って多くの人が亡くなった。

第一波、第二波、第三波と、さらに大きな津波がくる可能性もあるため、津波警報が解除されない限り、避難した場所から戻ってはいけない。



ここで大事なことは、津波警報にしたがってきちんと避難した、ということそれ自体にある(まだ終わっていないが)。

結果として、避難しなくても大丈夫だった、ということになったとしても、避難しないほうがよかったなどと思ってはいけない。

なぜなら、そうした避難行動はいつか助かるための「生存行動」に他ならないためだ。

たとえ、この先、津波警報が鳴って津波がこなかったとしても、高台に避難するという行動は無駄ではなく、それがいつか巨大津波がきたときに助かるための「生存行動」として欠かせない行動なのだ。

たとえば、あなたが車通りの多くない道で信号を無視しても突っ切っても、すぐに事故に遭うことはないかもしれない。

しかしずっと信号を無視し続ければいつか必ず大きな事故に遭い命を失うことになる。

信号を守るということは生き続けるための「生存行動」なのだ。

津波警報が出たら避難するのもそれと同じことだ。



今回は津波警報通りに津波がきたが、今後津波がことないときだってあるだろう。

そうしたことが続くときもあるかもしれない。そうした「警報のからぶり」が続くと「オオカミ少年効果」となり、人は逃げなくなる。

被災地外ではあまり知られていないが、東日本大震災の約1年ほど前にチリ津波があった。そのとき3mの大津波警報が発令されたが、80cmほどの津波しかこなかった。

現地で聞き取り調査をすると、「あれが大きかった」(油断につながった)という声をかなり耳にする。

さらに震災の2日前、後から思えば予震なのだが、震度5弱の地震があった際にも津波注意報が発令されている。

その際も実際にきた津波は50cm程度だった。いわば「警報の空振り」が続いたのである。

そうした状況が続いても避難行動を取り続けるためには、まず避難行動とは「今避難するための行動」ではなく、いつか起きる大きな災害時に生き延びるための「生存行動」である、と考えを改める必要があるのだ。

そのように認識を根本から変えなければならない。



津波警報が解除されたが、ここで「こんなことなら寒い中逃げなくてもよかったね」などと絶対に言ってはいけない。

そうではなく「今回みたいにきちんと逃げれば、いつか津波がきたときにもみんな助かるね!次に警報が鳴ったときも必ず避難しようね!」と声をかけあい、褒め称えることが大切だ。

もし今回海岸や河口、河川の近くで避難しなかった人がいたならば、「巨大津波がきたときにあんた死ぬよ。避難行動は生き続けるための生存行動なんだから」ときつく叱りとばさなければならない。

人間は褒められればその行動を繰り返すようになり、叱られたり罰を与えられればその行動はしなくなる。

行動主義のシンプルな強化原理だが、生存行動(避難行動)を続けるためにはその原理に乗っ取り、適切な行動はしっかり褒めて、不適切な行動はきつく叱る必要がある。

また高台に避難した際に、非常食をみんなで食べながら、震災や訓練について話しあうといったように、避難した際には、それができるだけ意味ある行動になるように工夫することで「生存行動」が癖づけられるようになる。

それぞれ工夫してみるとよいと思う。



また北上川沿いにある大川小学校は海岸から5km離れた地点にあったが、10mを超える津波がきた。さらに驚くべきことに河口から49kmほど遡った地点に3.8mの津波が到達して被害が出ている。

海岸や河口付近でなくとも〈川=海〉という認識を持ち、高台に避難する必要がある。



現在、ふんばろう東日本では、チームを組んで、こうした津波から命を守るための知識を、Q&A方式でイラストを交えながらわかりやすくまとめた冊子を作成している。

来年に入ってからになると思うが、その冊子を論文といっしょに被災地の学校のみならず、沿岸や河川付近の学校を中心として日本全国の学校に送って、防災教育に役立ててもらうプロジェクトも立ち上げる予定。

南海トラフ巨大地震は、過去この地域で定期的に巨大地震が連動して起きていることから遠くない将来に起こる可能性が高いとされている。

内閣府(防災)の有識者会議によると最悪の場合、マグニチュード 9.1で20メートル以上の津波だけで8都県に及び、死者数 32万 3000人との予測。

そのうち津波による死者数は最大で23万人。

避難タワーが各所に建築され、10分以内に避難することで、津波による死者数は、5分の1の4万6千人に減ると推計されているが、それでも東日本大震災の2倍を遥かに上回る。

もっともそうした最悪クラスの地震が起こる可能性は低く、南海トラフの地震はもっと小さい可能性の方が高いといわれているものの、いずれにしても正しい知識を持ち、訓練を重ねることで、いつかどこかで必ずくる巨大地震を生き延びる可能性はぐんと高くなるのは確かだ。



東日本大震災は終わっていない。復興は、ふっこうの「ふ」の文字を書き始まった段階に過ぎない、というのが現実だ。

巨大津波にしても、原発事故にしても、教訓を次に活かしていくことが、ポスト3.11の社会を作っていく上で前提にしなければならない。

そのことを思い出させてくれる地震だったようにも思う。



なお、1mで済んだから実質的な被害はない、というのは間違いで、陸上は被害がなくとも、ようやく立ち上がろうとしている養殖業を営む漁師さんには打撃となる可能性がある。

実際、現地の漁師さん(チーム「さかなのみうら」の長さん)に電話したところ、やはり震災以前にも50cmほどの津波でも養殖棚などが大きな被害が出たことがあるとのこと。

明日の朝、確認するそうです。無事でありますように。





2012.12.7. 21:30 早稲田大学大学院専任講師・「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表 西條剛央





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Last updated  2012/12/17 09:32:12 PM
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