1095868 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

淀風庵の酒詩歌日記

淀風庵の酒詩歌日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

2011年01月03日
XML
カテゴリ:ウォッチング
 織田作之助が昭和16年3月に掛買いした瀧井孝作『無限抱擁』。たまたま、天牛書店で岩波文庫版を150円で先月買ったのを読んだ。

 この作品は大正10~13年に4編に分けて雑誌に発表され、昭和2年には単行本として刊行されている。読んだ文庫版は昭和16年2月に刊行されており、織田作はこれを早速40銭(現在の400~500円)で買ったものであろう。

 内容は瀧井自身の体験にもとづく、愛妻・哀傷物語であるが、そもそも夫人は吉原遊郭の娼婦であった、そして親にそのことを告げずに、結婚する。そして、楽しい新婚生活も彼女の結核、その介抱の末に儚い終末となってしまう。
 その事実をあからさまに、会社勤めしながら瀧井は書きはじめ、結果として作家として世に出ることになる。

 初め読みながら、デュマ・フィスの『椿姫』を想起させたが、派手な生活が描かれるわけでなく、東京下町での慎ましやかな借家生活が舞台である。
 瀧井自身が巻末に述べているが、もともと「夢幻泡影」という儚さを頭に浮かべていたが、もっと積極的に愛情表現をと考えて「無限抱擁」という標題にしたそうだ。

 織田作は、18年4月に発表した『わが文学修業』で、「大学へ行かず本郷でうろうろしていた二十六の時、スタンダールの『赤と黒』を読み、いきなり小説を書きだした。スタイルはスタンダール、川端氏、里見氏、宇野氏、滝井氏から摂取した。」と書いており、この瀧井にも学んだのであり、後に会う機会も得たと記している。(26歳とあるが、実際には満年齢で24歳の昭和13年の時)

 瀧井から織田作が学んだもの、それは庶民の目線? それと、主人公が結核で亡くなるというあたりには関心があった? カフェにいた愛妻の境遇に似通ったものがある点?
 ただ、後に織田作の一枝夫人はガンに伏したから、二人はこの小説を思い浮かべ反芻したろう。 そして、織田作は一枝を無限に抱きしめたい心情を抱いたであろう。

 瀧井は志賀直哉を師を仰いでおり、志賀には公私において世話になっていおり、志賀夫妻の媒酌で再婚し、志賀が奈良に移転したときには、追っかけけ移っているほどだ。この点、志賀嫌いの織田作ではあったが、芥川賞選考委員でもあった瀧井には親しみを覚えていたのであろうか。

 なお、瀧井は元々俳句が好きで、河東碧梧桐や荻原井泉水に早くから認められている。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2011年01月03日 12時10分45秒
コメント(2) | コメントを書く
[ウォッチング] カテゴリの最新記事


日記/記事の投稿

カテゴリ

カレンダー

バックナンバー

・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月

お気に入りブログ

首位攻防戦 dekoponさん

年収106万円の壁、撤… 山田真哉さん

生かげろう ricacoさん

旅日記 はるrinさん
漫画家の座談会 安里624さん

コメント新着

 ちろるみっきー@ Re:蕪村忌と正岡子規(12/24) 私は毛馬で産まれ育ち蕪村を身近に感じて…
 淀風庵@ Re:琵琶弾き語り「雨ニモマケズ望酒詩」(08/24) Youtubeでお聴きいただけます。 https://w…
 ヒロ伊藤、観学院称徳@ Re:石浜恒夫とフランク永井、藤田まこと(06/06) たいへんご無沙汰しています。 Facebook …
 淀風庵@ Re:昭和37年上映「愛染かつら」(12/17) https://www.youtube.com/watch?v=MGp8swd…
 淀風庵@ Re:第七十二回有秋会日本画展(09/06) 楽天の画面では、写真が横向きになってし…
 淀風庵@ Re:東京大衆歌謡楽団「りんごの唄」(05/15) https://www.youtube.com/watch?v=AYp_Ku8…
 淀風庵@ Re:ハルカス駄洒落句(03/11) 天気ですとよく見えます。 お城が、ツイン…
 LUCKYFIELDS@ Re:ハルカス駄洒落句(03/11) ご自宅からも見えるのですか?先日行きま…
 淀風庵@ Re[1]:オダサク倶楽部で5年経過(12/01) LUCKYFIELDSさん ご無沙汰失礼しました。…
 LUCKYFIELDS@ Re:オダサク倶楽部で5年経過(12/01) ご無沙汰です、ブログ書き込みが無いので…

プロフィール

淀風庵

淀風庵

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ


© Rakuten Group, Inc.
X