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カテゴリ:織田作之助
織田作之助が書いているように、虐げられた異常な人間の可能性を鋭く突いている。本質より実存との哲学思想を謳う前の短編小説集である。
「水いらず」は不能の夫、「壁」は死刑前の政治犯、「部屋」は精神障害の夫、「エロストラート」は無差別殺人を企む男(秋葉原事件のごとき)が対象である。サルトルはこれらの人間に存在価値を認めようと思考するのだ。 これら危機的状況に追い詰められた、社会的病理をテーマとした心理描写小説であり、読んでいて気持ちが圧迫されて、感動が湧かない。 織田作が、1946年に東京新聞に載せた「サルトルと秋声」と雑誌に書いた「可能性の文学」より抜粋。 「サルトルの提唱するエグジスタンシアリスム(実存主義)は、虚無主義に基づいた不安の思想であるが、しかし、サルトルは現実逃避もせず、不合理な人生、醜怪な人間を直視したまま、敢て救いも求めず、希望も抱かず、「水いらず」は病気の不足であるが如き健康などに憧れぬ病気の文学として、劇しい毒を含んでいる。」 「極度に追究された人間の可能性を、一度原始状態にひきき戻して精神や観念のヴェールをかぶらぬ肉体を肉体として描くことを、人間の可能性を追究する新しい出発点とした。人間が醜怪なる実存である限り、いかなるヴェールも虚偽であり、偽善であるとした。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年07月11日 23時17分32秒
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