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カテゴリ:織田作之助
織田作賞を受賞したり候補となった30代の大阪生まれの中堅女流作家には、津村紀久子や川上未映子がいるが、同世代で大阪生まれの柴崎もこの作品で織田作之助賞を受賞している。
会話はほとんど大阪弁で溢れているが、実際に話した言葉が写し取られている場合を除いて、地の文は標準語である。 大阪のミナミを舞台に、バイトとか仕事の安定しない人物が登場したり、合コンが当たり前のように描かれ、携帯電話・メールが日常のツールとして関係の綾を織り成すような、現代を象徴する状況を設定した物語。 モチーフは、大阪の古地図、焼跡などの古写真、映画やテレビの映像に、今の大阪の風景をオーバーラップさせながらのノスタルジックな心模様といえるもの。 親や祖父母の時代の市電が走るような街に想いを馳せることは、自分の歩む必ずしも幸せに思えない現代的な味気ない街があるからでもあろうか。 最近たまたま、「大阪人」最終号増刊として、「古地図で歴史を歩く」が発刊されたが、都市の変化を知り見ることは、自分の存在を再認識できて感慨を覚える。 本作品は平成18年に発表されたものだが、作者も、そのような気持で書いたに違いない。また、東日本大震災の壊された街を、在りし日の街の映像を見ながら、後々人々はどのような気持で想い起こすのであろうか。 なお、終了したNHK『プラタモリ』街の歴史と人々に脈々と継がれる営みを描いて好評だったが、この著書が先立つものであり、大阪についても映像化してほしいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年05月10日 23時17分16秒
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