奈良で奇遇邂逅の友
急遽、墓参に奈良へゆくことにして、昼過ぎに家をでる。近鉄に乗り換える前に難波で昼食をと家人がつぶやいたが、奈良に着いてからにしようと家人を急き立てる。 2時半頃に奈良に着き、駅前の商店街でうどんを食べることに決め、店内に入ると、学生時代の友M君らしいのが一人ぽつんと座っており、目が合う。黄緑の洒落たカジュアルシャツを着ていて一瞬目を疑った。一昨夜千日前で共に地酒三昧したばかりの彼である。 奇遇だなあと、家人とともに向かい合わせで座る。彼はいま注文したところである。彼はすでに国立博物館での天竺展を3時間かけて見終わって、食事に立ち寄ったというから、生活態度が余輩とちがってしゃきっとしているのだ。時空を超えてでななく、彼とはまさに邂逅で、時空をこの場で共にしたことになる。 彼は蒲焼+うどんセット(1,000円)を、こちらは冷やし天ぷらうどん(750円)を食べながら、そういえば、いつぞや阪神百貨店の上階のレストランでばったり夫婦同志で出会ったことや、さらに昔、阿倍野の近鉄百貨店で家人ともども出くわしたこと、帰阪したときの住まいの最寄駅が彼と同じ桃山台で、しかも勤め先が同じく西中島であったことを思い出しながら、なにやら呼び合う特別の縁を感じずにはおれなかった。 それじゃ、奈良に来ていつも寄る古書喫茶「ちちろ」へ行きませんかと誘い、『殯(もがり)の森』主演の宇多茂樹さんにも紹介してしばし歓談。河瀬直美監督の新作『朱花(はねづ)の月』の上映が9月3日から梅田ガーデンシネマであると聞き、チケットを彼は買う。 友と別れて、日差しも弱まった5時ごろに青山の墓地にてくてく参り、駅前に戻り、燗酒一杯で夕食、満ち足りた気分の一日であった。