カテゴリ:本
日本では獣肉忌避の時代が長かったにも関わらず、海洋哺乳動物である鯨を「勇魚(いさな)」と呼んで、魚類として食べられて来たのはご承知のとおりです。 発酵・醸造学分野の第一人者、東京農業大学の小島武夫名誉教授は、研究の傍ら世界中津々浦々を旅し、「食の冒険家」と自称するほどの健啖家で有名ですね。その著書「奇食珍食 」の中で、小島先生はわが国の鯨食文化について触れておられます。
小島先生は、我々の身近でない動物が食べられていることを知ると、何んとなしに違和感が生じるのは、どこの民族でも同じであろうと書いておられます。 その意味では、日本人が鯨を食べるのを見て他の民族が違和感を覚えるのもわからないではないと。 魚、鳥、哺乳類から爬虫類・両生類、はたまた軟体動物・腔腸動物、昆虫まで、普通の人ならまずは口にしないだろうといういわゆるゲテ物、小島先生はそのすべてを賞味しつくし、その料理方法、味、風味についてこと細かく列挙しておられます。もちろん鯨も。 私は小学校の学校給食で鯨の竜田揚げを食べて育った世代ですが、個人的には鯨肉特有の脂のにおいが鼻について、正直美味しかったという記憶はありませんね。 今となっては鯨肉は滅多に手に入らぬ貴重品となって久しく、すでにもうその味の記憶も薄れてしまいました。懐かしい、もう一度食べてみたいという気持ちもわかないというのは、日本人として寂しい気もしないでもありません。 実は、たまたま数日前に極寒のシベリアのツンドラ地帯でトナカイを放牧する遊牧民の生活を追ったドキュメンタリー番組を視聴しました。カメラはマイナス40度の吹きさらしの屋外でトナカイの毛皮で作ったヤッケにくるまっただけで眠りにつく遊牧民を映していましたが、そのような環境の中でよく眠れるものだと驚きましたね。たとえ眠りにつけたとしても、翌朝目を覚ますことはないのではないかと思ってしまいます。 彼らに翌朝目を覚ますことを可能にさせているのは、彼らが摂る食事。彼らはトナカイの生き血をすすり、生肉をむさぼり食う。とりわけこってりとした脂肪を常食としているのだとか。 農耕民族の子孫である我われからすれば、極寒の環境は耐えることはできたとしても、獣の生き血とか生肉の脂身というのは我慢ができないとしたものですが、極寒のツンドラの大地に生きる彼らにしてみれば、アツアツのご飯にみそ汁などは、想像も及ばない食べ物ということになるのでしょう。 ・・・なるほど。小島先生のおっしゃる通り、「奇食珍食 」は民族次第というわけです。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年09月04日 11時50分04秒
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