カテゴリ:本
日本人の化学物質アレルギーの甚だしさは、水俣病やイタイイタイ病、カネミ油症中毒事件を例にとるまでもなく、重金属や化学物質は体に有害であるという考えが人々の頭に染みついているからだと言えそうです。 ・・・化学物質はなぜ嫌われるのか? そのものズバリの題名の本がありましたので、ご紹介します。
鉄や銅、亜鉛といった重金属でさえ体の健康を維持していく上で必要な物質であることは、血液の赤血球中のヘモグロビンには鉄が不可欠であることを考えればすぐにわかること。 「身の回りのものに必ずリスクがあるのと同様に、利益も何かしらあるもの、この両者のバランスを正しく評価し、利益がリスクを十分に上回る場合にのみ使用するというのが、本来の正しい化学物質とのつきあい方である」というのが、著者の一貫した主張のようです。 曰く、「実際上さほどの害がないと思われるものばかり気にして、本当に危険なものへの注意がおろそかになるのでは本末転倒である」と。 このリスクの許容ラインの章で例にあげられていたのが、化学物質のベンゼン。化学を志す者、とりわけ有機化学の分野では、いの一番に習うのがこのベンゼンという炭素6個、水素6個からなる炭化水素。 このベンゼンから解熱薬のアスピリンや貼薬でおなじみの鎮痛薬の主成分が作られていると聞けば、なるほど有用な化学物質だなと思う一方、このベンゼンには発ガン作用があり、飲料に含まれるベンゼンの濃度も10PPBと厳しく規制されていると聞けば、そんな危険な物質が基準値の130倍も検出された豊洲の土壌は安全なのかと心配になりますね。 「1PPB」とは、1トンの水にベンゼンを1滴垂らしたときの濃度にあたると著者は説明しています。時の長さを例にとれば、「32年の時の長さの中の1秒」のことだとも。 逆に考えれば、それほど僅か(1トンの水に10グラム)であっても人体に有害な物質であるといえましょうけれど。 なるほど1トンの水を一度に飲んだら人は間違いなく死にますね。ちなみに食塩なら、わずか200g一度に食べると死ねるそうです。 「 恩恵 > リスク 」を忘れて、ただただ目先の危険を煽るのは、有用な化学物質ベンゼンの持つ危険性以上に危険極まりないと思うのです。 『化学物質はなぜ嫌われるのか』、ぜひご一読を。目からうろこの一冊です。 「酒とそばと」幻冬舎から好評発売中この度幻冬舎さんのご協力を得て、拙著『「酒」と「そば」と』を出版しました。このブログの酒とそばについて書いたものを加筆修正したものです。肩肘張らずに気軽にお読みいただけるエッセイ集です。 まず「はじめに」から、書店での立ち読み気分をお味わいください。 はじめに 小粋な蕎麦屋に入って、いきなり「天婦羅そばを一つ」なんて注文するのは、いただけませんな。まあ、うどん屋に入ったわけじゃないのだから、蕎麦屋に入ってそばを注文して何が悪いということになるのでしょうけれど。しかし、もしあなたが「そば通」と呼ばれたいのなら、そして真の「酒飲み」と呼ばれたいのなら、カウンターに座ってまずは厨房からこちらの様子を眼光鋭くうかがういかにも頑固そうな店主の視線を浴びながらも、店の雰囲気をしばし味わうようなそぶりを見せてから、おもむろにこのように言ってみたいもの。 「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」 そんな古き良き時代の蕎麦屋の流儀なるものについて書かれた本を、書店で目にしたことがありました。私がまだ高校に上がったばかりのころだったでしょうか。 ほぉ~、蕎麦屋とは、まず酒を飲むところだというのか。俺もやがて蕎麦屋へ入ることがあったら、そんなセリフを吐いてみたいものだと思ったものでした。 ・・・あれから五十年、何の因果か製麺業を営むことになった私は、その蕎麦屋へそばを納めに行っては、「毎度ありがとうございます。今日から新そばで打ってあります」などと言うことはあっても、「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」などと言ったためしが久しくなかったことに今さらながら気づき、失望に打ちひしがれています。 日々仕事に追われながらも、いつかきっとそんな至高の悦楽を味わうことができる日の来ることを夢見て、「酒」と「そば」のうんちくを秘かに温めていると、驚いたことにこれはこれで楽しいではありませんか。 そのささやかな楽しみの一端を披露して、世の酒好き、そば好きといわれる皆さんと喜びを分かち合うことができれば幸せと、ペンを執った次第です。 「酒」と「そば」、二編に分けてご紹介していきましょう。 まずは「酒」編より、人は何故酒を飲むのでしょうか? 第一部「酒」編 「過ぎたるは及ばざるがごとし」 古来より「酒は百薬の長」といいます。実にいい響きを持ったことばですな。私は常々この心地良い響きを妻に言って聞かせるのですが、妻は私にこう言うではありませんか。 「あら、そういうものですか。では『過ぎたるはなお及ばざるがごとし』って、どのように響きになって?」と。 このほど世界保健機関(WHO)が発表したところによると、2016年に世界で死亡した人のうち約三百万人が、飲酒関連が原因と考えられるということです。「酒は百薬の長」とも語り継がれているのに、これほど多くの人が、飲酒が原因で命を落としているということは、これはやはり飲み過ぎたから、ということになるのでしょうか。 大雑把な計算になりますが、世界の人口を約七十億として、アルコールを摂取する人の数を約半数と考えれば、35億。 3,000,000 ÷ 3,500,000,000 = 0.086% という計算になりますから、なんだ、酒飲みの千人のうちの一人以下じゃないかと胸を撫で下ろした愛飲家の方、多いのではないでしょうか? しかしながら、どうしても気になるのは、どれだけ飲めば「過ぎたる組」になるのかということ。WHOの定義によれば、大量機会飲酒とは純アルコール換算で60グラム以上の飲酒機会を30日に一回以上持つことと書いてあります。そこで早速調べてみました。エチルアルコールの密度は、0.789g/ml ですから、 60 ÷ 0.789 = 76 ml、ビールのアルコール度数は、概ね5%と考えれば、 76 ÷ 5% = 1,520mlビール大瓶(633ml)二本半という計算になります。同様に清酒のアルコール度数を15%として計算すると、2.8合。 すなわちビールなら三本、清酒なら三合をひと月に一回でも飲む機会があれば、WHOは大量機会飲酒と定めているということになります。 確かにわが国はWHOに加盟しているかもしれないが、私個人はWHOになど加盟していないと主張する人もいるでしょう。見上げた心意気と拍手喝采を送りたいところではありますが、清酒三合以上を飲んだ翌朝のことを常々経験している者からすれば、やはりそうであったかとうなだれるしかありませんね。 あなたはうなだれる口ですか、それとも清酒三合ぐらいではうなだれませんと豪語する口ですか? う~む、古来より語り継がれてきたことわざ「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とは、なるほど深い含蓄のあることばだと認めざるを得ません。 飲ん兵衛な製麺会社社長が綴る、クスっと笑える蘊蓄(うんちく)が満載。 酒の文化や歴史、あらゆる種類の「○○そば」の由来、偉人の逸話に至るまで。 世の酒好きとそば好きに贈ります。日本人たるもの、これを知らなきゃはじまらない。 ぜひご一読いただければ幸いに存じます。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年07月02日 11時50分10秒
[本] カテゴリの最新記事
|
|