カテゴリ:パパの作品
まだの方は前編からどうぞ
お母さんは、二人の娘と手をつなぎながら厨房に入っていきました 奥からはダクトの回る音と、フライパンがコンロをこする音、それにおいしそうなお料理の匂いが漂ってきます お母さんがお姉ちゃん達を握る手の力が強くなります おそるおそる奥を覗くと、見えて来た来た(^^)/ 白い料理人の仕事着に赤のマフラー、背の高い帽子 シェフです ワインをお肉に振りかけると、フライパンから大きな炎が上がります ダクトは忙しそうに回り、オーブンからは甘い匂いがしています シェフの頭の上には氷を削って作ったような、透明でしっかりした輪が浮かび、背中にはラブさんと同じような翼がついています 「シェフ…(T_T)。ラブさん、かなんわ。シェフ若いやんか…結婚前の若さやわ(T_T)」 私は、翼で二度三度、お母さんの方に風を送りました するとどうでしょう? お母さんは、みるみる若くなりました 「お母さん、私らと姉妹みたいやん」 お姉ちゃん達はびっくりしています どうやらお母さんはシェフと初めて会った時の年齢に戻ったみたいです(^^) 「シェフ!」 「ラブ、もう帰って来たんか?」 シェフは顔はフライパンを見たままで言いました 「ラブ、次のサンタさん呼んでくれ!ケーキが焼けた」 「はーい」 私が合図すると、サンタさんの乗ったソリが厨房に横付けになりました 「よーし!出来たぞ~っ(^^)/」 シェフはそういいながらこちらを向きました 「…!」 「……(T_T)」 「……!!」 「(T_T)」 「blabon?…blabonか?」 「シェ…フ…(T_T)」 シェフは走ってきました お母さんも走っていきました 2人は激しくぶつかりました お母さんはシェフの右の頬に自分の右頬をこすりつけて、抱き付きました シェフはお母さんを抱きしめたまま、くるくると2回まわりました シェフの帽子は脱げ落ちました(*^_^*) 2人からこぼれた涙は、すぐに花びらに変わります それから少しの間は、私は気を利かせて目を閉じておきました(-_-) 「小百合…かい?」 「はい…お父さん(T_T)」 「隣はちるやな?」 「(T_T)」 ちる姉ちゃんはこっくりとうなずきました シェフは2人のお姉ちゃんも両手にしっかり抱きしめました 「いい娘になったなあ、2人とも…」 「あのぉ……」 オーブンの前の方から、申し訳なさそうな声が聞こえました 白わんの、めいちゃんです 「シェフ、お取り込み中、悪いんやけど…」 「???」 「焦げてるんですけど…」 「えらいこっちゃ!泣いてる場合とちゃう、ケーキ入れたままやったっ!」 外には次々と料理を待つソリが到着します 「みんな、悪いけどちょっとの間、これ貼って手伝っておくれ」 シェフは、みんなの目元にしわパッチをつけながら言いました お母さんは、お魚とお肉の下ごしらえをします 「blabon、上手になったなあ」 「シェフの教え方が良かったんよ(^^)/お料理にはちょっと自信あるんやから」 シェフは、お母さんの仕込みをした材料を使ってフライパンやオーブンを使います 小百合姉ちゃんとちる姉ちゃんは、お皿を並べてお料理を盛りつけたり、ラップしたりしています(^^)/ それを私とノエル、ゆばの3人でソリに載せます ソリはひっきりなしに到着しては、出て行きます 3日間みんなは座る間もなく働き続けました そしてようやく最後のソリを送り出しました 2人のお姉ちゃんと、ノエルゆばはシェフが用意した雲のベッドで眠ってしまいました 大仕事を終えたシェフは、次に家族だけのための料理を作りました 「あ、君は手伝わんでもいい」 シェフはお母さんを雲のソファに無理矢理座らせて、お料理をお星様でできたテーブルに並べ、隣に座りました 2人は胸の前で手を組み頭を垂れました 2人の胸の中に同時に、出会いから別れまで、そしてその後の今日までが走馬燈のように映し出されました お母さんはシェフの肩に頭を載せました シェフは左手で優しくお母さんの髪を撫でます 「blabon…ありがとう…、ありがとう(T_T)」 「シェフ、ごめんね何も出来へんかって…」 「何言うてんの、あんなにしてくれたやないか」 …あのな、僕はこちらに来ても君や子供達と暮らしたあの幸せな毎日のことは忘れたことはない。歳こそ離れた2人やったけど、僕はこんなに分かり合えることがあるのかと思う位、君とは心が通じていたと思うてる。 …子どもが生まれて、これからと言う時に…君もつらかったやろ。ごめんなあ …え?僕も苦しかったやろって? …それはちょっと違う。「献身」って言う言葉あるやんか?自分が病気になるまでは、僕は『人間は結局自分がいちばんかわいいんや』って思っていた。けどなあ、君が僕の病名を僕に隠して笑顔で、笑顔の裏側では僕の身体に少しでも良いものをって、工夫して毎日毎日作ってくれて…僕は、人間にも自分以上に大事なものがあるって、君に教えてもらったんや …そやのに、その気持ちに答えられんと、だんだん痩せてしもうて、時々そんな自分が悔しくて君につらく当たったこともあったんやないやろか? …けどな、最後の方は目がギョロッとしてたって君は言うけど、それは痩せたからとは違う。自分のために身を削って支えてくれた「献身」をしてくれた最愛の人の姿を、そしてその人との間に授かった宝物を両目をカッと見開いて見て憶えておきたかった …それに、最後に君と洗礼を受けることが出来たことは、最高にうれしいことやったよ …僕がおらんようになって、苦しいこともいっぱいあったやろ?でも、人生を投げ出さないでよく生きてくれた …2人の娘も立派に育ててくれたなあ、ありがとう。君らは僕の自慢や(T_T) 「…(T_T)ありがとう、シェフ…」 …それとなあ、君に伝えておきたいことがある。君はこれからもっともっと幸せになりなさい。なんでかと言うたら、それが僕の幸せやから…。君はもう知ってるやろ?こちら側は決して嫉妬の無い世界やということを …君がうれしい時は僕も笑う。君が悲しい時は僕も涙を流す。君が恋する時は、僕もワクワクしてうれしい。うそとちゃう。なぜなら僕は君の中にいるから、君の感じる思いはそのまま僕の思いやってことや …ええか?幸せになるんやで! お母さんは、シェフの肩に額を押しつけて、イヤイヤをするように頭を振りました 「もう(^^)世話の焼けるやっちゃなあ。これならわかるやろ!」 シェフはお母さんをギューーーッと抱きしめました お母さんも目をつむって思いきり力を込めました すると、お母さんの両手はだんだん狭まって、シェフの姿は何もなくなりました 「シェフ?シェフ!どこ?どこ行ったん?」 …そやから、ここやて、言うてるやないか! 「どこなん、どこにいんの?」 …ここや、しっかりしろ! お母さんは胸に手を当てました …分かったか? シェフの声はお母さんの心の中から聞こえました …僕は君と二度と離れることなんかない。君の心の中にいつもいる。君が心に感じたこと、君の思いはそのまま僕の思いなんや!心配な時は胸に手を当ててみ。僕も一緒に考えよう 「…分かった(T_T)」 そう言って目を開けると、お母さんの隣にはまたシェフが優しい目をして座っていました そして子供達もノエル、ゆばもテーブルを囲んでいました 「ねえ、あの歌をもう一度歌ってくれないか?賛美歌199番」 どこからともなく、パイプオルガンの音が聞こえてきました お母さんが歌い始めるとみんなもそれに続きました 「さあ、食べよう」 メリークリスマス!メリークリスマス! 食事をしながらシェフは色々な楽しい話をしてくれました ラブもノエルもゆばも実はシェフが送り出したものであること ゆばは「イブ」っていう名をつけて送り出しのに、地上についたら「ゆば(^^)」っていう名になっていたことなど… みんな、おなかがよじれるくらい笑いました 目が覚めるとお母さんは、マンションのお部屋にいました 「何なん?…めっちゃ不思議な夢やったわ」 あくびをしながら起きたお母さんは、リビングに夕べ夢の中で食べたのと同じお料理が並んでいるのを見つけました お母さんは、胸に手を当てて目を閉じました …分かったか?(^^) 「分かった、シェフ、メリークリスマス」 …ああ、メリークリスマ~ス!(^^)! シェフの声がはっきり聞こえました(*^_^*) パパの作ったものがたりへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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