シングル母のアメリカ暮らし

友人が散歩の帰りによってくれた。

「ねえねえ、あそこの公園に銀杏が落ちているって知ってた？」

銀杏？
銀杏ですって？！！！！

あちこちにイチョウの木があるのは知っていたが、
メスにしか実がならないと言われている、
あのクサーイ銀杏が、この界隈に落ちているとは知らなかった。

さっそくプラスティックの袋を持参して駆けつける。
あった、あった。（狂喜乱舞）
この銀杏は何よりの私の好物なのだ。

息子たちはあまりの匂いの凄まじさに
近寄ることも出来ない。
仕方ないので、私一人でせっせと拾いまくる。
ほんの１５分で１００個くらいの実を拾った。
洗ってかわかして、４、５日したら食べられる。
（洗ってすぐだとかなり匂いがきついので）

私はとにかく塩炒りして食べるのが好き。
あまり長く保存すると乾燥して堅くなるので
ゆでて冷凍保存も出来る。
茶碗蒸しに入れたり、中華風の炒め物に加えたり。

日本にいたときもよく銀杏を拾いにいった。
秋になると必ず食べたくなるものの一つだった。

それからムカゴ。山芋の赤ちゃんだ。
カヌーをやっていた時は、奥多摩の川沿いの遊歩道に
たくさん山芋の蔓があったので、たくさん摘んだ。
一度、東京の六本木と赤坂の間を歩いていたら、
道路沿いの空き地のフェンスに山芋の蔓が絡み、
ムカゴがびっしりとついていた。
お洒落をして出かけたというのに、
バッグの中の化粧ポーチを開けてその中にムカゴを詰めた。（笑）
きっと道行く人は変な女だと思ったに違いない。
（このため、飲み会に３０分遅刻）

これは塩炒りしたり、ご飯に炊き込んだりする。
小さな里芋のような味。
独特の風味があって、私は好きだった。

前にも書いたが、両隣のうちにはそれぞれ柿の木がある。
今年は富有の方はほとんど実を付けていない。（残念）
でも渋柿の方は鈴なりだ。
これは皮をむいて干し柿にしたり、
熟すまで待って、トロリとした果肉を
スプーンで食べたり、お菓子にしたり。
熟した果肉を冷凍保存することも出来る。

隣のおっさんの家には林檎の木があり、
彼は食べないのでいつも失敬する。
今年は今ひとつ、実があまりつかなかったようだ。
友人の家からもたくさん頂いたので、
アップルソースにしたり、
パイやアップルクリスプにしたり。
今年の我が家での流行は「まるごとりんごパイ」。
大きな林檎の芯をくりぬき、
バターと砂糖とシナモンをつめて、
冷凍のパイ皮で包んで焼く。
焼いたら適当に切って、アイスクリームと一緒に食べるのだ。
うまっ。

家には大きな中国梨の木もある。
すごくおいしいというものでもないが、
せっかくの秋の味覚だから、感謝していただく。
砂糖と煮るとほんのりピンク色に染まって
わりとおいしく食べられる。

ざくろも私は好きなのだ。
ルビーのような光沢のある実を一粒ずつはずして口に入れる。
たくさんはいらないけれど、毎年ひとつふたつ頂いてくる。

毎年行くパンプキンパッチの駐車場には
大きな栗の木がある。
イガイガを靴で踏んづけ、中の実を取り出す。
光沢のある小さな栗の実が一つ二つ出てくる。
そう幾つもいらないので、
１０個ほども拾ったら、家に帰ってゆでていただく。

この季節、どこの国でも収穫を祝う。
魚でも、木の実でも果物でもおいしくなるからだ。

私は日本で生まれ育ったので
やはり日本の食べ物も恋しいが、
アメリカのこの時期の食べ物だって
なかなか捨てたものじゃないと思っている。
パンプキンパイや、栗のプディング、
アップルパイに、お芋のキャセロール。

素朴な味わいが何ともいえないのだ。

収穫を祝って、
大地の恵みに感謝し、
有り難く頂く。

すばらしくおいしいと思えないものでも、
季節の贈り物だと思えば、文句を言う気にもならない。
工夫次第でおいしくなるものもあるし。

花を咲かせ、実をならせ、
木々が何ヶ月もかけて大切に育てた子供たち。
「うまいものではない」なんて言ったらバチがあたるよね。



本日の献立：チャプチェ（韓国のヌードル）、実だくさんのソーセージと野菜のスープ、ごはん