新 緑仙の日々是好日(古い友人からの電話)
「青い風が吹く頃になったね。元気してる?今も翔んでる?」懐かしく優しく語りかける古い友人の声。「私もだんだん翔べなくなってきたわ。」「急に声が聞きたくなって電話したよ。」「あら、どうしたの?何かあった?」「いや何も無いけどさ‥ほら、今年も命日が来たからさ‥」「あ〜そうだったわ。」「あれ、忘れちゃった?」「忘れていないけど、今、思い出した。」そうだった‥緑の風が吹く頃があの人の命日だった。「僕もだいぶ歳を取ったからあいつとの思い出を語る人もだんだん減ってきたよ。」「お互いに歳を取ったのね。」「僕はさぁ、僕が大好きだったあいつのことを君と話したいんだ。」「昔、昔のお話?」今は亡き人の思い出を語り合うのは慰めにもなるし、供養にもなると彼は言った。「明日、ちょっとした仲間内の集まりがあるので君の事を話してもイイかな?」「私のこと?って‥」「君が翔んでるお嬢さんだった頃の話さ。」「まぁ〜どんな話?」「君が我が街の駅に降り立った時の話だよ。」「僕は君に驚いたね〜あいつは、すごく照れてた‥」駅に花が咲いたようだったよ。」「今頃、そんなお世辞を言っても何も出ないわよ。」「いや、これは僕とあいつだけが知っている本当の話だよ。」「今度、一緒に墓参りに行こうな。」「ええ、そうね。」電話を切った‥心の中がくすぐったいようなくた〜っと溶けていくような気持ちになった。「こんなにも光揺れたる青楓 緑仙」にほんブログ村にほんブログ村にほんブログ村