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テーマ:映画館で観た映画(8571)
カテゴリ:TV・映画・書籍・音楽・アート
映画を2本、観てきました。
2本とも、年寄りばっかり出てくる映画です(笑)。 私は年寄り映画が大好き。 年寄り映画ってハズレがない。 コクーン ドライビング・ミス・デイジー ストレイト・ストーリー スペース・カウボーイ 他にもいろいろ。 もちろん、今日観た2本も、素晴らしい作品です。 1本目に観たのが、「マルタのやさしい刺繍」。 【登場人物】 マルタ:主人公。息子は町の牧師。つまり名士。 ハンニ:友達。息子は地域民主党のリーダー。つまり名士。夫が車椅子で要介護。 フリーダ:友達。老人ホームに住んでる。元・社長夫人。 リージ:他の3人よりけっこう若い。シングルマザーでアメリカンテイストでカッ飛んでるので、村で浮いてる感じ。娘が美容師。 夫に先立たれ、早く死にたいなんて欝になってたマルタ。 「Hans」と名前が書かれたナプキンリングをじっと見つめて悲しみに沈んでいます。 近所に住んでるリージが、そんなマルタを元気づけようと、遺品の整理に押しかけたときに見つけた綺麗な箱。 箱の中には、とっても豪華な刺繍のランジェリー一式。 「これは自分が現役時代に作ったもの」 「ランジェリーショップをパリで開くのが夢だった」 と語るマルタの背中をリージが押します。 「じゃあ開きましょうよ、ランジェリーショップ!」 そんなの無理じゃん……と尻込みしていたマルタですが、リージに連れられて入ったランジェリーショップで、商品を眺めているうちに、目の色が変わってきます。 「これは縫製が甘い」 「これは模様が生かせてない」 マルタがみるみるプロの顔に戻っていく、このシーン大好きです。 でも田舎ですから、そういう新しいことは迫害されるわけですよ。 「下着なんていやらしい」 「共同体の和を乱す行為だ」 「いい歳して恥を知れ」 むしろ、そういう下劣なことしか考えられないオマエの無知による偏見を恥じろと。 中島みゆきの「ファイト!」にもそういう人、出てきますよね。 薄情もんが田舎の町にあと足で砂ばかけるって言われてさ 出てくならおまえの身内も住めんようにしちゃるって言われてさ 要するに、共同体から頭ひとつ抜け出ようとする人への嫉妬ですよ。 いわゆるしがらみ。「イナカのイヤなところ」。 ああやだやだ。これだからイナカはキライ! それでもマルタの心は折れない。 マルタの友達も折れない。 村で売れなきゃ「インターネットで売ればいいのよ!」 フリーダは、老人ホームのパソコン教室で勉強して、ECサイトを立ち上げます。 ハンニは自立のために自動車学校に行って免許を取ってきます。 「ランジェリーに民族衣装の模様を刺繍したら独自性が出て売れる」とアイデアを出すリージ。 でも複雑だし、難しいかな……?と話す他メンバーに 「できるわよ」 とあっさりきっぱり言ってのけるマルタ、かっこいい!さすがプロ!憧れる! フリーダが立ち上げたサイトから、どんどん問い合わせや注文が来るようになって 「老女実業家大成功!」みたいな新聞記事にもなるくらいの成功を収めます。 それを見たハンニ息子(民主党リーダー)が怒ります。 ほらやっぱり嫉妬なんじゃん。これだからお山の大将は。 ラストは胸のすくようなハッピーエンド。 いままでの鬱屈が一気にスカッとします。いいぞやっちまえ!って感じ(笑) 都内はシネスイッチ銀座1館のみの上映ですが、これは是非観てください。 手芸映画じゃなく、マルタと仲間が社会と闘う、ロックな映画です。 2本目に観たのが「ヤング@ハート」。 「マルタのやさしい刺繍」のリージが憧れたアメリカの、ロックな爺さん婆さんたちのお話。 平均年齢80歳。 日本の老人ホームなら演歌とか童謡とか歌わされてる年齢。 ところが、このひとたちが歌うのは Coldplay「Fix You」 Jimi Hendrix「Purple Haze」 SONICYOUTH「Schizophrenia」 Talking Heads「Road to Nowhere」 David Bowie「Golden Years」 などなど。 しかもえらくかっこよく作りこまれたPVが3曲くらいあります。 バリバリです。 The Clash「Should I Stay Or Should I Go」を92歳のアイリーンが歌うわけです。 歌詞の意味が変わってきます(笑)。 「アタシは、生きる?それとも逝く?」 92歳ですがシャウトもします。この曲、アタマからいきなりシャウトですから。 彼女は、インタビュー中、スタッフに「寝室に行ってもいい?」と冗談を言われて 「いいわよ、遠慮しないで!3人、4人?カモンボーイズ!」 と何のためらいもなく返します。 何度も言いますが92歳です。 練習前に、監督からお知らせがあります。 「週末、○○さんが入院しました。一時はヤバかったそうで、枕元に神父が呼ばれたそうですよ。……この中で神父を呼ばれた事のある人いる?」 アメリカ人のジョーク、ハンパないな。 スタンは、タングルウッド音楽祭のシャツを着てて、TVの上にメトロポリタン・オペラの番組表を貼ってるくらいのクラシックファン。 シェイクスピアの詩について語る知的でインテリな爺さん。 それが、コーラスではパンクロックでシャウトしています。 なんでパンクロック?ってインタビュアーに質問されたら 「それは、つまり、自分の可能性を広げたいから」 平均年齢80歳のジジババですよ。スタンだって76歳です。 みんなトシだから、日々仲間が入院したり死んだりしていきます。 (実際、この映画の中の6週間で2人亡くなったし、エンドクレジットでも訃報が) もちろん自分だっていつお迎えが来るかわかんない。 それでこのセリフ。 シビれます。 「ロックとは何か」という文が、プログラムに載っていました。 ロックとは「Stick it to the man」だと書いてありました。 stickとは反抗すること。突っ張ること。 manは、そのときによって、体制であったり権力であったりするでしょう。 X JAPANのYOSHIKIが奉祝曲を演奏したとき、東大の偉い教授が言ってたそうです。 「ロックとは『反体制』『反権力』であるから、ロッカーが天皇に曲を捧げるのは間違ってる」 反体制がロックなんじゃない。そんな解釈は浅いし間違ってる。 ロックが闘う相手は「自分が自分らしくあるために、それを妨げるもの」。 「ヤング@ハート」のメンバーは、自分らしく生きるための武器として、ロックを歌います。 年齢とか、病気とか。自由にならない体。遠からず必ず訪れる死。 死を迎えるそのときまで、ロックを歌っていよう。 「マルタのやさしい刺繍」のマルタたちは、自分らしく生きるための武器として、美しいランジェリーを作ります。 そして、それを妨げて枠に押し込めようとする社会と戦い、打ち倒します。 彼らの生き方こそロックです。 私もかくありたい。 ラストの、フレッドが歌う「Fix You」。涙がこぼれるほど感動的です。 ヤング@ハート-オリジナル・サウンドトラック ============================== 2009/1/24追記: 上の動画で「Fix You」を歌ったフレッド・ニトル氏が、1月1日に癌のために亡くなったそうです。 'Young@Heart' singer dies at age 83(USA TODAY) Just three weeks ago, after getting word that his cancer was inoperable, Knittle faced his fate with the resolve and humor of a life well lived: "Although I wish there was more pleasant news about my condition … Oh well, I don't expect to get out of this world alive." ご冥福をお祈りします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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