シーサッチャナーライ
今までおこなって来た旅は、町から町へ、時には国を跨いだり、あっちこっちを転々と渡り歩く、明日の宿さえ分からない、言わば、“放浪型”の旅でした。いつしか、其れとは異なる旅がしたいと考えるようになりました。其処で、選んだのが“定住型”の旅でした。一ヶ所に留まり、其処を拠点に旅をすると云うものです。“旅”と云うよりは“滞在”と云った方が良いかも知れません。前回の旅で、其れを実現する事が出来ました。滞在する町に選んだのが、タイ北部のランパーンでした。何も特別なものが無い(たとえば、ビーチとか遺跡とかの有名な観光名所などが無い)庶民的で素朴な田舎町と云うのが魅力でした。滞在地が決まり、部屋探しとなりました。ランパーンにはタイ人の友人がいるので、其の友人の協力もあり、手頃な部屋が見付かりました。其処は主に学生が宿泊している学生宿舎でした。学生が泊まる宿舎に学生でもない私なんぞが泊まっても大丈夫なのだろうかと心配したが、さすが、寛大なタイ、大家さんは躊躇する事も無く、学生でもない日本人の私を快く受け入れて呉れました。築10数年、3階建ての建物で、外観に少し汚れが見えました。部屋は10部屋程。リフォームしたてで、内装は丸で新築のように綺麗になっていました。部屋は広く、一人で使うには一寸勿体ない気がしました。他の部屋の学生達は大抵4,5人で一部屋を共有して使っていました。家賃が月1500バーツ。日本円で4500円強だと考えるとかなり安いと思ったのですが、学生達は、他の宿舎に比べて此処は少し高めだと言っていました。水道代は月50バーツ。水を幾ら使っても50バーツと云う不思議な料金設定でした。正し、水道水は飲む事が出来ません。インターネットは月250バーツで24時間使い放題。然し、幾度も接続不能となり、かなり悩まされました。電気代はメーター式で使った分だけ払う仕組みでした。電気代は月平均110バーツ程で収まりました。何よりも幸運だったのは、宿舎の大家がとても親切で好意的だった事です。 宿舎は静かな場所にあって、とても居心地好く過ごせました。もっとも皆学生なので、学校へ出ると人が居なくなるので本当に静かでした。 私は、カメラをぶら下げ、ランパーンの町を歩く毎日を過ごしました。田舎町なので、ばったり知り合いなど見覚えのある顔と幾度も出くわしたり、擦れ違ったり…。そんな中、心のおもむくままに写真を撮り捲くりました。日帰りで近県を旅する日もありました。 大家のマーノートさん(写真右:がたいのよい男性)は、スコータイ県のシーサッチャナーライの出身。後にランパーンに移り住んだそうです。現在は学生宿舎を経営しながら、電気会社の社員として働きに出ているとの事です。休みの日、マーノートさんが車で生まれ故郷のシーサッチャナーライへ遊びに連れて行って呉れました。マーノートさんのお姉さん(写真右:黄色い服の女性)はシーサッチャナーライの小学校で教師をしていると言うので、其処の学校を見学させて貰いました。 ▲ 木造2階建の水色の校舎、水色の体操服と共に色鮮やかでした。 ▲ タイの古典楽器・ソーウーの演奏を見せて貰いました。マーノートさんの運転する車で、ランパーンの宿舎からシーサッチャナーライの遺跡まで往復しました。途中何度かお寺に立ち寄りました。 ▲ 骨董品などが展示された博物館。機織も最早、骨董です。 ▼ シーサッチャナーライ歴史公園《Si Satchanalai National Historical Park》 周囲約50平方キロ程の内に遺跡が点在しているそうです。 一日では到底回りきれないので、おおよそ巡って帰りました。 マーノートさんはとても親切な方でした。休みの日を割いて朝から晩まであっこっちへと遊びに連れて行って呉れました。其の上、御馳走までして呉れました。無償の優しさに感謝しています。全くの予定外だったシーサッチャナーライへ足を運ぶ事が出来たのも幸運でした。 3ヶ月弱の宿舎での生活は大変心地の良い体験となりました。