雨の夜の 病院で・・・
「 怖い話 」そとは、まだ雨が しとしと降り続いている・・・・晩酌の熱燗を ちびりちびりとやりながら 「 ふと 」思い出した話しだ・・・・・入院中、なかなか寝付けない夜型の私は 毎晩、病棟のロビーの長椅子で 非常灯の薄明かりを頼りに 日記を書いたり、本を読んだりして深夜まで過ごすのが日課になっていた。それは、今日のように一日中、雨が降っていた夜の出来事である・・・いつものように本を読んでいた私の後ろから「 コツン・・ コツン・・ コツン・・ 」と、階段を上がってくる足音が聞こえてきた。2時間ごとに院内を巡回警備しているガードマンだろう。足音が近づくにつれ、何か「 ぶつぶつ・・」と、人の声が聞こえてくる・・・・やがて、それが言葉として意味をなしてきた。「 お願いだから 戻ってくれないか・・・下で家族が待っているから・・・病棟に行っても何も無いから・・・上にいっても仕方ないから・・・・」<あれ?一人じゃないんだ・・> と、顔をあげ 正面のガラスに映った 自分の後ろに目を向けると、そこには、いつものとおり一人で巡回するガードマンさんの姿が・・・< ひとり?? > 驚いて、振りかえった私の視線と、ガードマンさんの視線が合った。すこし間が空いたあと、ガードマンさんが語ってくれた話しだ・・・「地下の霊安室からずっと上がってくるんだけど、こんな雨の夜は亡くなった患者さんの霊が一緒についてきてしまう・・・病棟にきても、もう何もないのにね・・・まあ、最上階まで行ったら、また降りていくからいいんだけど、やっぱり一緒に歩いていくのは あまり気持ちのいいものじゃないから・・だからお願いしているんだ・・」一瞬、ガードマンさんの後ろの空間が 歪んで見えた・・・・ある、雨の夜の 不思議な出来事でした < end >