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カテゴリ:小説『鏡の中のボク』
いったいなんだっていうんだ…。
次から次へと現れる、正体のわからない人物達。 危険な人物じゃないのかもしれないけど、あれよあれよと言う間に巻き込まれて振り回されっぱなしだ。こっちに来たかと思えば、今度はあっちに戻るなんて言い出して。 巧はジェクソンを見返しつつ、頭の中にはそんな文句が浮かんできていた。 「時間が無い」 ジェクソンが待ちきれず、巧の手を掴んだ。 しかし、汚いものに触れられたように、巧はその手を振りほどき、撥ね退けた。 「いったいなんなんだよ!俺には何が何だかさっぱりわかんないよ!何でこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ!!」 巧が突然叫びだしたので、目を閉じてじっとしていたマジョンナがその目を開いた。 「ど、どうしたのいきなり!?」 ロイキが驚いて巧の元へ駆け寄る。 自分でもわからなかった。何もこんな時に言い出すことじゃないのに。それが今思っている素直な気持ちなのか、誰に向けて言ったわけでもなく、そんな言葉が口を突いて出てしまった。 「まったく…こんな時に何言ってるんだ?もっと状況を考えて物を言いなよ」 ミクタがそう言い放ったが、言われた巧もその通りだと思った。 「ご、ごめん。その…何でもないんだ。すいません、ジェクソンさん」 巧の謝罪に、ジェクソンは何も言わずに首を横に振り、今度は巧から手を差し出すと、それに応じてくれた。 「行こう」 ジェクソンが巧の手を引き鏡を手にした時、隣のマジョンナが起き上がって言った。 「巧…ごめんなさい。あなたをこんなことに巻き込んでしまって。あなたがそんな風に思うのも無理ないわよね…もっとあなたの気持ちを考えてあげるべきだった。だけど…お願い。今だけは我慢して欲しいの。ここでジェクソンに従うことは、巧のためでもあるわ。わかってくれる…?」 巧はマジョンナを見つめながら、聞いているのか聞いていないのか自分ではわからない感覚でいた。それでも、マジョンナに問われた時、コクリと頷いていた。 「ありがとう。さあ、行きましょ」 マジョンナはにっこりと笑って立ち上がると、巧のもう一方の手を繋いだ。そしてジェクソンと目を合わせると、お互いに頷きあった。 「巧、目をつぶってるといいわ」 マジョンナに言われ、返事も無く瞼を強く閉じる巧。その暗闇の中でも、先ほどの自分に対して向けていたマジョンナの表情が残っていた。 「よし、行くぞ」 ジェクソンの声がしたと思うと、腕から強く引っ張られる感触がした。それに続き、前に感じたニュッ、というなんとも言えない感覚も体が通り抜けていく。 その瞬間、ロイキの「やばいよ!!」などといった声が聞こえたが、間もなくそれも聞こえなくなった。 ←よろしければ読み終わりの印にクリックをお願いしますm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.02.01 22:46:41
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