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本の足跡

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2006年12月29日
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カテゴリ:た行 男性

13

“13階段”

評価:★★★★★

 

長編。

主人公は刑務官。彼は犯行時刻の記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすために調査に乗り出す。そのパートナーとして彼が選んだのは、殺人の前科を負った青年。死刑囚に残された時間はあとわずか。彼らは無実の男の命を救うことができるのか・・・!?

これはすごい。間違いなく私の中で今年のナンバーワンです。今までの人生の中でも、3本の指には入ると思う。コストパフォーマンス高すぎです。

単なるミステリーの粋を超えてます。もちろんミステリーとしても最高。二転三転するストーリー。飽きさせないし、毎回予想もつかない展開が待ってる。それもさることながら、何よりも、現在の死刑制度、ひいては刑法そのものの抱えるジレンマ、矛盾・・・そういった問題提起があり、とても考えさせられる。

刑法とは応報刑なのか目的刑なのか。今の日本は目的刑に大きく傾倒しているが、それでいいのかという問題。これは、一律には論じられないと思う。

今の日本は目的刑思想をとっているため刑法犯の再犯率が50%近いと、かなり高い率になっているとも言われている。

また、刑法が実現しようとする正義には、決して普遍的な基準がないとうこと。同じ犯罪でも、それが行われた時代、その事件を担当する法曹(裁判官・検察官・弁護士)など諸条件によって、極端な場合、大きく量刑が変ったりするのである。

この本の中で紹介されている判例には、正直驚かされた。正義って一体何なのかと真剣に考えた。

これと話はかわるんだけど、前法務大臣の杉浦正健さんは、任期中、一切の死刑執行命令書にサインしなかった。なぜならば、彼は死刑廃止論者だったからだ。このことに私はかなり疑問に感じていた。

死刑執行命令書に署名することは法務大臣の職務である。もし法務大臣が署名を拒むならば、それは職務規定違反になる。それでも彼が持論(死刑廃止論)を貫徹したいならば、彼は法務大臣になるべきではなかった。法務大臣になった以上は職務をまっとうする義務が彼にはあったのである。

こういった、持論を公私混同する問題が今年ありましたよね。光市母子殺人事件です。この事件の被告人の弁護士が、かなり横暴な理論を用いて、極刑必至の被告人の弁護をし、死刑を免れようとしてました。

この弁護士も死刑廃止論者なのです。でも、自分の思想を仕事に持ち込み、自身の思想を実現させようと、恣意的な弁護をすることは許されるのか?これもかなり問題になりましたよね。

その他にもたくさんの問題提起がなされていて、ストーリーの登場人物達は、懊悩しながらも自分なりに答えをみつけるのです。

私は思う。なぜ青年は裁かれなければならなかったのか?そこに誰もがジレンマを覚えるだろう。確かに彼は人を殺めた。でも本来なら正当防衛が適用されるべき事件だったし(しかし彼には非行歴があったため傷害致死になった)、相手は殺されて当然の人間だった。

刑務官の最期も、どう考えても、絶対彼は悪くない。それなのに結局彼は裁かれなければならなくて・・・。

正義って一体なんなんだろうって心底考えさせられる。世の中は理不尽なことが多すぎる。例えば、事件の被害者はPTSDを発症して病院に通えば、治療費は自腹。なのに、加害者は病気になっても税金で治療。被害者はおそらく一生事件に捉われ、懊悩して生きていく。なのに加害者は、刑務所では三食つきで、(少量ではあるが)お金を稼ぎ、娯楽も楽しめる、税金を使ってね。そして、刑期を終えて出所すれば過去は忘れてまた元の生活に戻れる。

みんな口に出してはいえないけど、犯罪者、主に殺人犯重大な刑法犯は、被害者と同じ苦しみを味あわせてやればいいと思ってるんじゃないかな。

テレビで無反省な被告人をみるたびに、第三者ではあっても、とてつもない憤りを、それをみんなが溜飲の下がる方法で裁ききれない現在の司法に対するジレンマを、みんな抱えてるんじゃないの?DEATH NOTE がヒットしたのが、その証左だと私は思う。

いや~ホント深いよ、この本。とっても含蓄のある作品です。






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最終更新日  2007年10月31日 14時32分48秒
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