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カテゴリ:ノンフィクション
“墜落遺体” 評価:★★★★★
1985年8月12日、群馬県・御巣鷹山に日航機123便が墜落。なんの覚悟も準備もできないまま、一瞬にして520人の生命が奪われた。本書は、当時、遺体の身元確認の責任者として、最前線で捜査にあたった著者が、全遺体の身元が確認されるまでの127日間を、渾身の力で書きつくした、悲しみ、怒り、そして汗と涙にあふれた記録である。(「BOOK」データベースより) この事故のことはリアルタイムでは知りませんが、日本史上最悪の飛行機事故として知ってはいました。 凄惨ですね。人は自分の愛する人を突然失ったときどうなるのか。特にこの事故は、遺体は見るも無惨な形になっている人がほとんどだったわけで。家族のそのときの衝撃は察するに余りあります。 どの遺族も、突然の訃報に対し驚き、怒り、悲しみ・・・。色々な感情が渦巻いて、怒りを誰にぶつければいいのかわからない。どんなに悲しくても涙を流し続けるだけではダメで、遺体確認など、様々な手続きをしなければならなくて。 読んでいて、涙が溢れました。遺族はもとより、遺体確認に携わる警察、医者、看護師・・・そういった方々にとってもとてもつらいことだったと思います。 私が特に胸をしめつけられたのは、以下の描写です。P90より。 一家の希望が虚しい残骸に変わり、どんなに心が破壊され、喪失したとしても、失ったものは帰らず、人生はそのまま進行していく。 「僕は泣きません」 前頭部が飛び、両手の前腕部、両下肢がちぎれた黒焦げの父の遺体の側で、十四歳の長男が唇をかんでいる。 妻はドライアイスで冷たく凍った夫の胸を素手のままさすっていた。 「泣いたほうがいいよ。我慢するなよ」 担当の若い警察官が声をかけ、少年の肩を軽く叩く。 「僕は泣きません・・・・・・」 震える声で少年は同じことばを必死にしぼりだした。 「泣けよ」といった警察官の目からボロボロと涙がこぼれ落ちている。 確認の説明をした歯科医師が、にじみでる涙を押し戻そうとして天井の一角を見あげている。 少年の気丈さに涙が出ました。警察官や医師の気持ちもよくわかります。仕事だからとわりきれるものじゃないんですよね。遺族に感情移入してしまうし、これが自分の家族だったらと思ってしまう。 ・・・言葉がありません。この事故は遺族に、そして、この事故に関わった警察、医師、ボランティア、等々の人々に大きな傷を与えたことでしょう。そしてその傷は薄れることはあっても消えることはないのだと思います。 === 26冊目 読了 === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月23日 17時24分59秒
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