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カテゴリ:ノンフィクション
“驕れる白人と闘うための日本近代史” 評価:★★★★☆
「言挙げせよ日本」の意味は、多くの日本人が欧米諸国でやっているような、日本の(伝統)文化の紹介、解説などとは全く次元を異にしたものである。氏の言う「言挙げ」とは、「日本の弁明」であり、「言葉による自国の防衛」である。 (「訳者まえがき」より)
「松原久子」という明らかに日本人と思しき著者名でありながら、訳者「田中敏」となっていることに違和感を覚える人もいると思う。 そこにこの本の最大の特徴がある。原著は、日本人である松原氏がドイツ語で綴り、ドイツで出版したものなのだ。それを逆輸入したのがこの本である。 私は、海外で日本の弁明を行ってくれる憂国の士がいることに感激した。 日本国内で真実の歴史を語ることはもちろん必要である。しかし、それと同時に国外にも発信していかねばならない。内外ともに現在まかり通っている歴史の誤謬を正してこそ、真の意味で日本が汚名を返上し名誉を挽回することになるからだ。 その意味でもこの本はとても価値の高いものであると思う。 内容ももちろん素晴らしい。私は常にフラットな状態で物事を考えたいと思っている。しかし、この本を読むと、フラットだと思っていた自分が、無意識のうちにバイアスかかった考えをしていたことに気づかされる。 例えば、世界史の教科書に必ず出てくる「新大陸の発見」という文章。それに違和感も持たず中学・高校と私は過ごしてきた。 しかし、これに違和感を抱かないことがすでに「驕れる白人」による洗脳の結果だと著者は指摘する。 つまり、「新大陸の発見」というのは、白人の視点にたった歴史である。先住民からみれば、長い間自分たちが住んでいた土地に突然白人が上陸してきたのであってそれは「新大陸の発見」どころか、「白人による侵略」の歴史であるのだ。 目から鱗。まさに著者の指摘通りだと思う。他にも白人が自分たちを正当化するために歴史を歪曲した表現がたくさんある。例をあげると枚挙に遑がないのでここでは割愛する。お知りになりたい方は是非読まれることをお勧めする。 日本人は明治以降、白人=優秀・正義・文明人であり、反対に有色人種=愚昧・悪・野蛮人だと思い込まされてきた。そして、それがいつの間にか欧米コンプレックスへとつながり、今もその精神は脈々と受け継がれているように感じる。(いわゆる“知識人”と言われる人間は、馬鹿の一つ覚えのように「欧米では○○なのに日本はいまだに××」なんてことを臆面もなく口にしますよね。) 知らず知らずに染みついた白人コンプレックス。この根拠もない白人妄信は、いったいいつから、どのように現われたのか?日本人が誇りをなくしたのはいつなのか?著者はその答えを「鎖国時代」に見出す。 著者の指摘は正鵠を射ており、目から鱗の連続である。 日本人は、もうそろそろ欧米を妄信・崇拝し、日本を卑下するという卑屈な姿勢から脱却してもいいはずだ。そのためにも、こういった本を読み歴史力をつけ、そして海外に行って日本の弁明を行うことが肝要であると思う。 日本のことを何も知らないくせに日本に誇りを持てずに根拠のない卑屈さで(欧米と比較し)日本を非難する日本人の何と多いことか。そんな人間に限って海外への憧憬から国外へ行きたがる。 そして、そういった日本人は渡航先の国の人々に「日本とはどんな国なのか?」と尋ねられて何も答えられない。間違った日本に関する知識を持つ外国人に対して日本の弁明をすることもできはしない。 こんな人間が多くいることによってさらに日本人は世界で馬鹿にされるのである。 もっともっと歴史力のある日本人が増えることが重要だ。そうすれば、海外へ行っても日本の弁明ができる人間が特別ではなくなる。そのことが海外での日本の信用・名誉を回復することにもなるし、日本人に誇りを取り戻すことにつながっていくのだと思う。 そのためにも私も日々勉強していかねばと決意を新たにした。 ・・・と絶賛していたくせに★4つなのはなぜか?それは、日中戦争に関する記述で私とは異なる歴史解釈があったから。しかしそれ以外は本当に間然するところのない論文です。お勧め。 === 4冊目 読了 === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年01月19日 01時31分19秒
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