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テーマ:本日の1冊(3696)
カテゴリ:や行 男性
“悪人 下” 評価:★★★★☆
長編。 --- 梗概 ------------- 馬込光代は双子の妹と佐賀市内のアパートに住んでいた。携帯サイトで出会った清水祐一と男女の関係になり、殺人を告白される。彼女は自首しようとする祐一を止め、一緒にいたいと強く願う。光代を駆り立てるものは何か?毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した傑作長編。 (「BOOK」データベースより) ---------------------- 同じ高校の同級生が、高校の同窓会へ行った時の話を聞いた。(私は仕事だったため参加できず)みんな頑張ってるんだなって思った。ほんの少し前まで一緒の世界にいたこたち。今はまったく違う世界に住んでて、すれ違うこともなくなったけど。みんなそれぞれの世界で頑張ってる。私も頑張らないと。うん。
正直に言うと、読み終えたあとは、「で?いまいちだったな・・・」って感じでした。あっけなくて、予想通りで。 でも、しばらくたったら、ボディブローのように、きた。 「本当の悪人は一体誰だったのか?」 「そもそも悪人ってなんだ?善人なんてこの世にいるのか?」 色んなことを考えさせられた。深かった。泣けてきた。 まるっきりの悪人もいなければ、まるっきりの善人もいない。 人間って、悪も善も両方持っている生き物なんだと思う。善悪のバランスをうまくた保ちながら生きているのが普通なんだけど、時折バランスが崩れて悪が強くですぎることもあったり。 この事件は、かかわった人間たちの、ほんの少し悪が強くなった瞬間瞬間が重なって、重なって・・・そして主人公は罪を犯してしまう。 陳腐な言い方だけど、誰もが善人ではなかったが、悪人でもなかったんだと思う。 ほんの少しの悪意が、重なって重なって、大きな悪になったとでもいいますか。 事件にかかわった一人一人が持っていたのは、ほんの少しの悪意。でもそれが積み重なって最後は大きな悪意になってしまった。 導火線に火がついた爆弾をリレーしてるみたいなもんで。最初は爆発する心配はないけど、人から人へ渡っていく過程でいつ爆発してもおかしくなくなって。爆発したのは決してその時もっていた人のせいじゃない。本当に運がなかっただけ。 そんな感じです。悪意のリレー。 でもやっぱり人を殺した主人公は悪人といえなくもないのかもしれないけれど。でも悪人と言い切ってしまうには何か違う。 なんだかもやもやと考えてしまいます。哲学してしまう作品でした(笑) でも、本当にいい本だった。おもしろかった。吉田修一さんにはこれまで苦手意識があったけど、印象が覆されました。 === 6冊目 読了 === お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年05月23日 20時59分27秒
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