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カテゴリ:読書
反ユダヤ本が今だに問題視されているセリーヌですが、その性格はモノホンの聖人ってぐらい尊い人だったと思います。 ド・ブリノンの秘書シモーヌ・ミトルは「あらゆる悲惨に、勇気と雅量を以て手を差しのべる人」だと言っています。 解説より引用します。 パリの頃からセリーヌを識っていたド・ブリノンの秘書シモーヌ・ミトルは書いている。 「この時はじめて私はデトゥーシュ医師を識る機会を得ました。あらゆる悲惨に、勇気と雅量を以て手を差しのべる人でした。この人は作家としての人生より医師としての人生の方に千倍も情熱をそそられている、当時私はそう言う印象を受けたものです。[…]セリーヌはどんな人間も分け距てなく介抱しました。持前の不羈の性格から、自分の利害にも人の噂にも係わりなく、唯自分の心の命ずるままに働いていました。夜、呼びに来られると、深い雪の中を、時には随分遠くまで、勿論歩きで、懐中電灯もなしで出掛けて行きました。あの深い雪の上を歩くのは、とても大変なことでした。それでも彼は出掛けて行きました。必ず行きました。そして決して誰にも、唯の一サンチームも要求しませんでした」 小説の中に自分でも書いているように、彼は報酬を要求しなかったばかりか、薬を買えない病人たちのためにスイスから高価な薬品を自分の金で買って投与していた。後にデンマークの警察の訊問でも、彼は所持金の大半をジークマリンで使いはたしたと言っている。 解説によれば、亡命してコペンハーゲンに住んでいたセリーヌは、ナチのお陰で敗戦前に印税をデンマークの銀行に預けていました。 市民の反ナチ感情は強く、セリーヌを顧客とする新聞売りが、フランス語を話すセリーヌという男の存在を警視庁にチクり、逮捕されました。 戦前に反ユダヤ本を書いたというだけで投獄されたんです。 ヘンリー・ミラー等の署名活動もされ、再三にわたってセリーヌの釈放が訴えられ、釈放が検討される度に外務大臣の反対にあったそうです。 67歳で脳卒中で亡くなりましたが、おそらく亡命と獄中での暮らしが寿命を縮めたのではないかと思います。 セリーヌを訪ねた際のシモーヌ・ミトルの言葉を引用します。 「彼は見る影もなく変り果てていました、みすぼらしくやつれ、老け込み、疲れて、骸骨のようでした。私たちは二人とも胸が一杯でした。長いこと話しました。話すことは山ほどありました! 疲れているのに、庭の戸口までどうしても送ってくれると言って聞きませんでした。さようならのキスを交わしました。それが最後でした」 様々な国が戦争に巻き込まれ、敗戦国は戦争責任をとらされ、戦争中に失われた膨大な命に加え、粛清で不当に大勢の人が殺されました。 戦争で負けた国の人たち、負けた国に協力した人たちが何故殺されねばならなかったのか、と思います。 厳しく悲惨な状況を描いている中、救いになっているのがセリーヌの独特のユーモアだと思います。 時々思い出す「読者」のことを「諸君」と呼び、 「諸君のことを忘れていた」「また諸君を置き去りだ」「諸君だってうんざりだろう」 などの文が度々出てきて、めちゃ笑えます。 なんとも滑稽な登場人物の描き方、いい大人たちが食器を投げ合って大喧嘩する場面等が大好きです。 しかもそれが…… ちょっと引用します。 割ったのは皿だけじゃない! 食器全部、スープ鉢もだ! ちっとやそっとの狼藉じゃない! 自分でも何してるか分からなかったんだ、まるで竜巻だった! ガチャン! ガラガラ! 目の前の食器棚や置物目掛けて! まずい事にみんな逸品ばかりだった、揃いのセットだった、ドレスデンの時代物の!…… セリーヌのユーモアにはドストエフスキー的なものを感じるのですが、影響を受けていそうですね。 ※前から気になっていた禁則処理、HTMLタグで自分で修正出来ることがわかりました⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾ 今までのを直すのは面倒すぎるので良いかなー。今後は行の頭に「、」「。」が付かないように書きます。 [やってみよう] 楽天ブログの禁則処理を自力でなんとかする方法 クリックよろしくデス☺️ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 3, 2020 03:15:37 PM
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