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カテゴリ:読書
セリーヌの亡命三部作の二作目『北』を読みました。 上下2巻です。 結構ダルい読書でした(笑) でもやはり貴重です。 小説ではありますが、戦中の体験談ですから。 国書刊行会の説明を引用します。 バーデン・バーデンからクレンツリンへ、戦禍のドイツを縦断する悲惨な亡命生活。《第三帝国》最後の日々のドイツ年代記ともいうべき本作は、セリーヌ的視点・文体の究極を示す3部作中の最高傑作。 そうなんすか、3部作中の最高傑作。 ダルいなあと思って読んでいると、セリーヌが読者に語りかけてくるんです🤣 だからセリーヌ好きです。引用します。 ……それはそうとこっちの話は?……どこまで話したっけ? どこにいたんだっけ?……頭がごちゃごちゃんなっちまった……またまた君を忘れてた!……ま幾分理由はあるにしろ、それにしても……君を忘れちゃ大変だ!……最後に残った私の唯一の読者かもしれないもんね、ひょっとしたら……さてさて! ───中略─── できるだけかいつまんで話しちゃいるんだが、読者よ、それでも諸君にゃ随分苦労を強いた……味方か敵か知らないが、ただ我慢強いってだけじゃない、注意深く読みながら、そろそろ千枚に近づこうとしてる、諸君だってもううんざりだろう…… 結構自虐的(笑) 今本当に怖いと思っているのが、世界の共産主義化です。 ロシア革命のように拷問虐殺される事が起こらない保証はありません。 そういう描写がセリーヌ本に度々出てきます。 以下引用です。 じんみんとエリートが求めてんのは、つまりは古代ローマの闘技場なのさ!……血潮にまみれた処刑の場さ!……拷問と断末魔の悲鳴と闘技場いっぱいに飛び散る腹綿さ!……絹の半靴下だの偽おっぱいだの、悩ましい溜息に口髯だの、ロメオ、椿姫、寝取られ男……そんなのはもうお呼びじゃない!……スターリングラード!……ちょん切られた首の山! 自分のちんぽこを口に押し込まれた英雄たち! 帰りは手押車いっぱいの目玉を土産に……可愛らしい金縁のプログラムなんぞもう沢山! 本物を見せろ、血を流せ…… 子供だましの《八百長》プロレスなんぞもう願下げだ!……古代の闘技場を再開すりゃほかの劇場はみんな閑古鳥さ……忘れられてた流行が人気をさらうだろう……紀元前三百年の! 《ついに出た! ついに!》これこそロマンってやつが! てなわけで、私は早速とりかかる!……正式の夜会服だと? そんなもの要るもんか! 《怪我人の生体解剖》!……それさ! 深淵なる芸術も、何百年のいわゆる傑作も、そんなのはみんな屁さ! ペテンさ! 犯罪さ! もう一つ、人間の本質に残酷な所があるのかな? と思える箇所を引用します。 それにしても一番下劣な、一番恐ろしいのは、善良な市民て奴らだろう!……闘牛の観客、残酷ショーの客…… カミュの『異邦人』でムルソーを罵る《善良な市民》を連想しました。 とは言え、大衆が怖いのは確かなのですが、共産主義の残酷さの比ではないと、私には思えます。 『城から城』にも言及がありましたが、セリーヌはレジスタンスの暗殺の危機にありました。 以下引用です。 《棺桶》に追立てられてわがジラルドン通りを、正直言って夜逃げ同然、後にしてからってもの、私たちの身の上ときたら悪くなる一方だった…… 訳注によると、セリーヌはモンマルトルでレジスタンスから棺桶の雛形とともに暗殺の脅迫状を受け取ったそうです。 棺桶を受取った者は行動を改めない場合、多く暗殺されたとか。 ウイルスの話は予言的な気がします。 引用します。 彼は好んで《技術上》の話をした……疫病学の観点から……もはや有害な病菌なんて一つもない!……その結果が、殺戮戦だ! ところがこいつ、騒々しいばかりで何の解決にもならん!……細菌に見放されたらどうなるかって? 哀れなのは兵隊たちだ! 紛争は永遠に続くだろう、無駄の皮だ……《原子戦争》だって、嘘じゃない、細菌なしじゃ決して終るまい……ヴィールスなら物音一つたてずに、どんな怖るべき軍隊でもやっつける、二、三週間したらもう立ってる兵隊なんて一人もいない、全員がへどを吐き、魂も腹綿も吐き尽くし、のたうちまわり、「和平」を求めてわめき出す!これこそは断固なる事実、真面目な話! リスボンが期待してるのもそのことだ……この戦いがどうしたら終るかって?……ナパーム、毒ガス、硫黄、みんな下らん役立たずさ! 正真正銘のペストはもう根づかない! このわれわれの薄汚い戦争は、四四年のは、どうしたら終るんだろう?……何千年来のヴィールスはみんなもうその役目を果たさない! 元師たちはなんでもやるだろう、天地を爆破し転覆することもできるだろう、だが一匹の細菌を目覚めさせることはできない……皇帝どもが示し合い、互いに何万トンという肉を、兵隊を、数え切れぬほどの都市を、田舎を、揺籠を、病院を、亡命者を、屍肉置場を交換し合うそのさまは、まったくの新機軸、新たな様相新たなる屠殺場だが、だがそれでも戦争は終らない! 細菌が怠けてる限り、戦争は続く! 今日はこのくらいにして、次回へ続きます。 米大統領選はここ数日凄い展開になってますね。 目が離せないです。 こんなブログ記事読んでる場合じゃないんですが(笑)、ワシントンD.C.の睡眠タイムには、ちょっと落ち着いていられます。😁 デマ情報も飛び交ってますので、リン・ウッドさん、パウエルさん、ホワイトハウス関連等、確かな情報筋を確かめるのが大事です。偽物かどうかもチェックしてね〜〜 クリックよろしくです☺️ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 1, 2022 07:43:43 AM
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