「バカを磨け」― 幸せという義務・その二十三回目
二十三回目 10 四つの幸せ 私たちは誰でも、この世に生まれてくるに際して、非常に大きくて、掛替えの無い四つの幸せを持っています。一つ目は天の配剤です。配剤とは、薬を調合する事。また、調合された薬の意味ですが、天は私達の一人ひとりに合致するようにと、どんな名医も及ばない絶妙の 配剤 を、予め用意してくれているのですね。本当に、有難いことではありませんか。如何です? 二つ目は、地の恵みです。お解かりですか?文字通りに母なる大地は限りなく大きな慈愛をもって、例外なく、私達皆を、何の分け隔てもなくいつでも、どこにいても、どの様な時でも、無条件で優しく受け入れようと待ち構えていてくれる。言うまでもなく、その愛は広大無辺ですよ。 三つ目は、人の和。和はまた輪でもあり、つまり英語のサークルをもその意味の中に含んでいます。漢字の「人」と言う字をよく見てください。二つの画が互いに相手の画を支えあうようになっていますね。つまり人間として生きる以上、誰でも一人ぽっちでは生きられないのですよ。人である、私たちの生存のためには、人の輪・和が絶対的に必要で、不可欠な条件なのです、実際のところ。――ここの所を、どうか、よくよく考えに考えて戴きたいのです。そして、どうかそんな世の中の仕組みなんか、私には、俺には関係ないよ、なんて横を向くような真似はしないで下さいネ。 最後の四つ目は、自分が自分である事、ですが、これは少し考えてみる時に実に「凄い」ことだと気付きます。だって、そうでしょう。機械で大量生産される商品は、どれを取ってみても皆同じようなもので「詰まらない」のですが、私達人間は一人ひとりがみな違っていて……、顔も性格も、考え方も、何もかもが全部同じではないものですよ。改めて、凄い事だと思いませんか。如何? この「自分が自分であること」、英語でアイデンティティーの有難さが、ある意味では一番分かりずらい事なのかも知れません。特に、現代と言う時代においては……。何故みんな、口では個性・個性と唱えながら、猿のように他人の真似を、―例えば、成功した実業家を或いは人気のある美人女優を、真似しようと躍起になるのでしょうか。それも本気で、それこそ命懸けで、一所懸命に後追いするのならマシなのでしょうが、どう見ても「不真面目」としか言えない手抜きで一体全体、何を望み、何物を得ようとしているのでしょうかね、ほんとに。少なくとも、私・草加の爺には、到底その真意の程が理解できないのです。 一番手抜きをして、楽をして、その結果に一番の得を、最大の利益を手にしたい。今、世の中に蔓延している便利主義とは、所詮その程度の底の極めて浅い、それ故にこそ、頭の弱い愚か者の耳には入りやすい「哲学」なのでしょうよ。『楽は苦の種、苦は楽の種』と、昔の人は実に深みのある真実を、これまたサラリと明快に・簡潔に言ってのけたものですね、心から感服するばかりであります。