「新 キャリァ論」その九
新・職人論の提案 ここで、主として身体や肉体を動かして「高級な知能や学問」などからは程遠い、「低級な生業(なりわい、生活のもとでを得るための職業。家業)」である職人を、キャリアという側面から新しい光を当て、新時代を切り開き、時代の最先端を開拓する 新しい職業の分野 として大いに推奨してみようと考えます。 職人と言えば、我が日本国は世界に冠たる一大・職人宝庫と呼ぶに足る、素晴らしいお国柄であります。古来からのこの良き伝統は今日に至るまで、脈々と受け継がれて、現代の経済的大国としての地位を支えている、まさに重要な原動力と評価されなければならないでしょう。そして古来伝統の所謂 手仕事 を中心とした職人さんの外にも、農業や漁業に従事するお百姓さんや、漁師さんなども含めて、これまでは「職人」とは呼ばなかった職業人をも、この「新職人論」では新しい時代の職人として、敢て見直しを迫ってみたいと思います。たとえば、大学教授を頭脳の専門分野における 知的職人 という風に規定してみる。その目的は「大学教授」の地位を不当に貶める事にはありません。「職人」の立場を時代の要請に適合するように正当に、また適正に定義し直す方に、重点があるのです。大学教授の中にも飛び切り素晴らしい頭脳と人格とを持ち合わせているお方もいれば、そうでは無い肩書きだけに頼り切った権威主義の権化のような人もいることでしょう。それは周囲の厳しい再評価の洗礼を改めて受けることで、自らの地位を自ずから高める契機としていただければ、ご本人にとっても社会にとっても非常な利益を齎すことに繋がる筈であります。 人類の歴史を概観してみますと、古代にはSacred King(人間の力を超えた絶対的な神の力を後ろ盾にした支配者)が統治し、中世にはWar King(人間の実力によって現世を支配する者)が実権を握り、そして現代は私見によればPop King(popはpopularの略語で、人気という大衆の支持を受けて今日の社会を牛耳っている者)の時代であり、次なる時代には、これも大胆な予見に基づく私見ではArt King(この場合のartは狭い意味のアートだけではなくartisan・職人の意味も含むアートで、人知・技巧の限りを極めつくした達人の意味合い)が現世を実効支配する時代が到来すると考えます。ですから来るべき新時代の中枢には、私の提案する新しいコンセプトによる「新しい職人」が当然の如くに据えられるべきものなのであります。 専業主婦の再評価 最近の女性の社会進出にはまことに目覚しいものがあり、そのこと自体は本当にすばらしい事だと諸手を挙げて賛同するに吝かではありません。ただ、専業主婦の立場がその煽りを受けて影が薄くなり過ぎているのが実に気がかりでならないのです。現代社会の様々な病的症状の大部分が、専業主婦の表舞台からの後退と共に発生してきていると、思われる節が多々ある。これは思い過ごしかもしれませんが、専業主婦の地位が不当に過少評価され過ぎていると、懸念するのは何も私一人ではないようですね。これも私・草加の爺の持論ですが、我が日本国は神代の昔から、女性の力によって支えられ、繁栄を築いて来た歴史的事実があるのですよ。天照大御神・太陽神はご存知の通りに女性神ですし、卑弥呼も勿論女性。平安時代の藤原氏全盛時代を裏から支配したのは女性の力でありましたよ。そして武家社会も男を陰で支え、その掌の上で上手に踊らせたのも、賢い女性の力ですね。庶民の生活にも「甲斐性なし亭主に、カカア天下」は今日にまで生きている日本社会の実相であります。実に、日本社会は今も昔も、賢明で働き者の女性たちによって、シッカリとその屋台骨を支えられ続けてきているのです、実際。 その中でも、一昔前の家庭の主婦は実に素晴らしい役割を果たし続けてきた。八面六臂という表現がありますが、一人で何役も演じ分け、大活躍していた。その蔭には大変な苦労が隠れていたのですが、その苦労の中に生甲斐や、幸せを見つけ出す賢明さを、余す事無く発揮してもいた。 しかしながら、キャリア論に職業の一つではない「主婦」という家庭内での女性の役割を持ち出すのは、場違いなのではないか?そんな疑問が投げかけられるかも知れませんね。しかし、私は昔の主婦の座をそのまま復活させることを意図しているのではありません。第一に、私たちの社会のあり方から意識のあり様まで、まるで様変わりしている昨今ですから、昔のままの主婦像を復活させる事など、そもそも不可能な目論見である事は、誰の目にも明らかでありましょう。女性の生き方が色々とある中で、専業主婦という役割に軸足を置いた一つの生き方が、選択肢の一つとして再認識される価値が大いにあるのではないか。そんな風に、新しい提案として女性たちの関心に訴えたいと思うのです。それは取りも直さず、家庭という私的な場所を、人生とかキャリアと言った立場から再検討する事に、直結する非常に大切な問題である筈だからなのですよ。そしてそれは女性自身にとってだけでなく、パートナーである男性にとっても大切な、重要な問題に直結することなのですね。ワーク・ライフバランスなどという言葉もありますが、まさに公的な仕事と私的な個人としての生活との兼ね合いを、どのように上手く折り合いをつけていくか。非常に大切な問題を孕んだ分野なのであります。