神慮に依る「野辺地ものがたり」
第 三百八十四 回 目 芝居台本 『 リア王 』 その四 10 〔 第三幕 第一場 〕 荒野 雷、稲妻の中をケントと紳士が出て来て相遭う。 ケント 誰だ、この凄(すさま)じい空の下を? 紳士 その空模様と同じく、心息(やす)まらぬ男。 ケント その顔なら覚えている。王はどこにおいでかな? 紳士 荒れ狂う風雨と揉合い、風に向かって叫んでおいでです。 ケント しかし、誰かお供は? 紳士 阿保がひとり附いているだけ。 ケント ところで、お顔は覚えている、その面識を頼りに、敢えて大事な事をお頼みしたいのだ。例の不和の事、いや、まだ表面には現れていないが、アルバニー、コーンウォール両公爵は互いに相手を陥れようとたくらんでいる。所が家中の者で、見せ掛けは如何にも忠実だが、実はフランス王の間者というのがいて、それが我がブリテンの情勢を一々彼の地に密告しているという有様。いずれにせよ、確かな事はフランス軍がこの乱れた王国に乗込みつつある事だ。そこで頼みがある、直ちににドーヴァ―の港にお急ぎ頂きたい。そこには喜んで迎えて下さる方がおいでの筈。その方に王のお苦しみが唯事ではない事をお伝え願いたいのです。 紳士 なお色々お話をお伺いしたいのですが。 ケント いや、その余裕はない、ただ、この財布をお預けしよう、コーディリア姫にお会いの節は、大丈夫、そうなる、この指輪を差上げて頂きたい、それを呉れた男が誰か、姫が教えて下さろう。 紳士 他には何か? ケント 王を見掛けたら、御苦労だが、そちらを頼む、わはこちらを探す、最初に見付けた方が大声で相手に知らせる事にしよう。(ケントと紳士別れる) 11 〔 第三幕 第二場 〕 荒野、別の個所 ますます募る嵐の中を、被り物の無いリアが道化と共に出て来る。 リア 風よ、吹け、うぬが頬を吹き敗れ! 幾らでも猛り狂うがいい! 雨よ、降れ、滝となって落ち掛れ、塔も櫓も溺れ漂う程に! 胸を掠(かす)める思いの如く速やかなる硫黄の火よ、槲(かしわ)を突裂く雷(かみなり)の先触れとなり、この白髪頭を焼焦がしてしまえ! おお、天地を揺るがす激しい雷(いかずち)、この丸い大地の球を叩き潰し、板のように平たくしてしまってくれ、生命の根源たる自然の鋳型を毀(こぼ)ち、恩知らずの人間共を造出す種を一粒残らず打砕いてしまうのだ! 道化 おお、おっさん、幾ら潤いが無くても家は家だ、なあ、家の中に這入ろうよ。 リア そうして轟轟(ごうごう)と腹を鳴らしていろ! 火を吐け! 水を落せ! 雨、風、雷、稲妻、いずれも俺にとっては娘ではない。お前ら自然を情知らずと恨みはせぬ、お前らに国を与えた事もなし、我が子と呼んだ覚えもない、お前たちには俺の指示を受けねばならぬ謂れはないのだ。幾らでも恐ろしい悪戯をしたらよい、この通り、俺はお前らの奴隷だ、哀れな、他愛の無い、誰からも蔑まれている、弱い年寄りに過ぎぬ、だが、やはり俺には、お前らが敵の卑劣な廻し者に見えて来るのだ、あの非道な二人の娘と示合して、天の戦を、これ、このような老いたる白髪頭に仕掛けて来るのだからな。ああ、ええい! 卑怯な! 道化 頭を突込む家を持つためには、まずその前に頭を持つことだ。 ケント登場。 リア いや、俺は見事、こらえて見せる、何も口には出さぬ。 ケント 誰かいるのか、其処に? 道化 いるよ、利口と(リアを指差し)阿保とさ。 ケント おお、ここに? リア 天空を荒れすさぶ神々が、一刻も早くその敵を見出されん事を。この身は罪を犯されこそすれ、犯した覚えのない者だ。 ケント おお、被り物もお召しにならず? お聴き下さいまし、この近くに掘立小屋が御座います、どうやら嵐を凌ぐだけの役にはたちましょう、そこでお休みくださいまし。 リア 気が狂いそうだ。さあ、その掘立小屋に行くのだ。 道化 (歌う)智恵の無い奴は、狂わぬうちに ― やれ また風か 雨降りか ― 運と諦め 呑気に暮らせ リア お前の言う通りだ、小僧。さ、掘立小屋へ連れて行ってくれ。(三人退場) 12 〔 第三幕 第三場 〕 グロスターの居城の一室 グロスターとエドマンドが燈(あか)りを持って登場。 グロスター 何という事だ、エドマンド、こういう人情の自然に悖(もと)る仕打ちは俺の性に合わぬ。俺が王を今の御境涯から何とかしてお救いしようと思うて、お二人の御承認を願出たところ、逆にこの城を召上げられてしもうた。 エドマンド 乱暴にも程がある。人情も何もあったものではない! グロスター まあ、よい、もう何も言うな。両公爵の間には溝がある、いや、事態はそれより険悪だ。実は今夜さる所から書面を受取った、王の今のお苦しみが完膚無きまでに復讐される日が来ようぞ。一軍は既に上陸している、我等は王にお味方せねばならぬ。俺はこれから御在所を尋ね、陰ながらお助けする積りだ、もし何か訊ねられたら、俺は病気で寝ている事にな。(退場) エドマンド そんな忠義立ては、お前さんには禁ぜられている筈、直ぐにも公爵に知らせてやろう、そうだ手紙の事も。(退場) 13 〔 第三幕 第四場 〕 荒野、掘立小屋の前 嵐が続いている。リア、ケント、道化が登場。 ケント ここでございます。 リア 放っておいてくれ。お前には大事(おおごと)のように思えるらしいな、大病に襲われ、不治と極まれる身には、小病はさして苦にならぬものだ。(道化に)小僧、先に這入るがよい、俺は祈りたいのだ(道化中に入る)― 着る物もない、惨めな貧乏人共、どこにいようと構わぬ、今この無慈悲な嵐に叩きのめされ、じっと堪えているお前達に俺は訊ねたいのだ、その蔽う物無き頭、満たされぬ腹を抱え、綴り合わせて穴だらけのぼろを纏うて、このような日々をどうして凌いでゆくのか? ああ、俺は今日までこういう事に殆ど心附かなかったぞ! エドガー (奥で)わあ、難破だ、浅瀬だ、こちらは哀れなトムでござい!(道化が小屋から飛び出して来る) 道化 お化けがいる、助けてくれ、助けて! ケント 誰だ、そこに居るのは? 道化 お化けだ、お化けだよ! ケント 何者だ、藁(わら)の中でぶつくさ言っているのは? ここへ出て来い! 気違いを装ったエドガーが小屋の中から出て来る。 エドガー あっちへ行け! 悪い鬼めが俺を掴まえて離さないのだよ! リア 貴様も娘に何も彼もくれてしまったのか? その成れの果てがこの様か? エドガー 誰だね、この哀れなトムに何か呉れると言うのは? リア そうか、娘共がこのような目に遭わせたのか? エドガー 悪い鬼には気を付けるのだよ。 リア 前は何をしていたのだ。 エドガー 騎士さ! リア 墓の中にいたほうがまだしも楽であろう、そうして裸の生身をこの寒空に曝して居るよりは。人間は唯これだけのものなのか、外から附けた物を剥がしてしまえば、皆、貴様と同じ哀れな二足獣に過ぎぬ。脱げ、脱いでしまえ、お前の着ている借物を! おい、このボタンをはずして呉れ!(着ている物を脱捨てようと藻掻く) グロスターが松明(たいまつ)を手に近づいて来る。 リア あれは何者か? グロスター 何たることか。さ、御一緒に城へ、臣下の一人として、お子様方の酷いお指図に従うのは、もう堪え難うなりました。 リア その前にこの学者と話があるのだ。 ケント もう一度お勧め下さいますよう、どうやらお心の乱れが。 グロスター どうしてそれをお責めできよう?(嵐はなお止まない)ああ、ケントの言った通りだ!必ずこうなると…。実はわこそ気が狂いそうなのだ。わにも倅が居ったが勘当してしもうた、全く何という夜か!さ、お願いにございます―― リア おお、待って呉れ、学者殿、お供をさせてもらおう。 エドガー トムは寒いとさ。 リア さあ、皆、中へ這入ろう。 ケント いえ、あちらへ、どうぞ。 リア この男の側がよい! ケント この上は、お言葉に逆いませぬよう、この男を御一緒にお供させましょう。 グロスター では、連れて来るがよい。 ケント さあ、来い、一緒に行こう。 リア さ、行こう、アテネの学者殿。 グロスター 声を出すな、よいか、静かに! エドガー 騎士ローランド、小暗き塔に 辿り着き 辺り怪しみ大音声(だいおんじょう)…(一同退場) 14 〔 第三幕 第五場 〕 グロスターの居城の一室 コーンウォールとエドマンドが登場。 コーンウォール この城を去る前に必ず復讐してやる。 エドマンド どれほど謗られます事か、親子の自然の情に背いてまで忠義立てせねばならぬのかと、それを考えると、いささか空恐ろしくなります。 コーンウォール 今になってみると、んがのあんちゃがあやの命を狙ったのも、あながち悪人だったからのみとも言えなくなる、むしろあの男の直観が、本来は許し難い悪の形を取って働いたと見るべきであろうか。 エドマンド 返す返すも悪運を引当てましたのはこの私、正しく振舞いながら、それを悔やまねばならぬとは! これが父の話して居りました手紙にござります、これにより、父が間者としてフランス方に通じていた事は明白と存じます。ああ、辛い! 同じ裏切りにしてもこのような ― しかも、その告発を自分が! コーンウォール 行こう、妻に会って呉れ。 エドマンド もしこの書面の通りでしたら、お急ぎにならねばならぬ事が山程控えております。 コーンウォール 真偽はともあれ、これでお前がグロスター伯になれる。父親の在りかを突留めておけ。 エドマンド (小声で)これで親父が王の世話でもしていれば、嫌疑はいよいよ深まるというものだ。(コーンウォールに)私と致しましては、どこまでも忠の道を歩みたく、たとえそれと血肉の情との間にこの身が引裂かれましょうとも、決して厭いは致しませぬ。(二人退場) 15 〔 第三幕 第六場 〕 グロスターの居城近く、百姓家の一室 グロスターとケントが登場。 グロスター これでも外よりはましだ、有難く思うてくれ。直ぐ戻ってくるからな。 ケント 御親切には必ず神々のお報いを!(グロスター退場) 入れ違いにリア、エドガー、道化が登場。 エドガー 鬼のフラットレット―が俺を呼んでいる。 道化 なあ、おっさん、教えて呉れよ、気違いは士族か地主か、どっちだね? リア 王だ、王だ! ケント さ、どうぞここへ横になって暫くお息み下さいまし。 リア 騒ぐな、垂幕をひけ。そうだ、それでよい、夜が明けたら、夕食を摂ろう。 道化 それなら俺は、日が昇りきったら、寝かせて貰おう。 グロスターが戻って来る。 グロスター 一寸ここへ。国王はどこにおいでか? ケント そこに、だが、お起しにならぬように、すっかり正気を失っておいでです。 グロスター では、お前に頼む、王をお抱きして、早くここを。お命を狙う陰謀の噂を耳にしたのだ。担架の用意がしてある、それにお載せしてドーヴァーまで落ち延びてくれ、其処には歓待と庇護とが待っている。 ケント (道化に)おい、手を貸してくれ。 グロスター さあ、早く逃げるのだ!(グロスター、ケント、道化が王を運去る) エドガー 身分は遥かに上でありながら、我等と同じ苦痛を背負わされている、それを見ていると、自分の不幸もさほど辛いものとは思わなくなる。さあ、隠れた、隠れた。(退場) 16 〔 第三幕 第七場 〕 グロスターの居城の一室 コーンウォール、リーガン、ゴネリル、エドマンド、及び召使達が登場。 コーンウォール (ゴネリルに)御主人の所へ急ぎお戻り頂きたい、この書面をお見せになるように、フランス軍が上陸したのです。裏切者のグロスターを早く見附け出すのだ。 リーガン 見附次第、直ちに絞首刑に処するがよい。 ゴネリル あの男の眼を抉り出しておやり。 コーンウォール 処罰は私に任せて貰う。エドマンド、あねちゃのお供を。アルバニー公にお目に掛かったら、一刻も早く開戦の御用意をと申し上げてくれ。 オズワルド登場。 オズワルド やはりグロスター伯爵がここよりお連れ出しになったので御座います。 コーンウォール 奥方に直ちに馬の用意をしろ。 ゴネリル では、お大事に、お二人共。(ゴネリル、エドマンド、オズワルドが退場) コーンウォール グロスターを早く見附け出すのだ。盗賊同様、縛り上げ、我等の前に連れて来い。(召使が数名退場)死刑の宣告を下す以上、一応裁きの手続きを踏まねばならぬのだが、力ずくでしたい放題の事でもせねば、この憤りは納まらぬ。 召使達がグロスターを引立てて、再び登場。 コーンウォール 何者だ、裏切者を連れて来たのか? リーガン 恩知らずの狐が! あの男です。 コーンウォール その萎(しな)びたけな(腕)を縛り上げろ。 グロスター どういうお積りか? ここではいわば客のお立場、度外れのお振舞はお慎み願いとう存じます。 コーンウォール 縛れと言うに。(召使達がグロスターを縛る) リーガン きつく、身動き出来ないように。穢(けがら)わしい裏切り者! グロスター 無慈悲なお方だ、わはそのような者ではございませぬ。 コーンウォール この椅子に縛附けろ。(召使達その命に随う)悪党め、思知らせてやる、いずれ―(リーガンが鬚を毟・むしり 取る) グロスター 慈悲深き神々にはその恥知らずの所行に、さぞかし驚いておいでだろう。 リーガン この白さ、それがこの裏切りを? グロスター 残酷な女だ、一体、どうしようと言われるのか? コーンウォール 最近フランスから受取った書面の中身は? グロスター 私が受取りました書面は、敵方からではありませぬ。 コーンウォール 王を何処へ送った? グロスター ドーヴァーへ。その訳は、見るに忍びなかったからだ。 コーンウォール 貴様のその目を踏躙(ふみにじ)ってくれる。 グロスター おお、酷(むご)い事を! リーガン 残る片目が隣の窪みを嘲っている。ついでにそれも! コーンウォール 思い知れ! 第一の召使 お留まりを! リーガン 一体、何を、犬の分際で? コーンウォール 下郎が何を?(剣を抜く) 第一の召使 (短剣を抜き)この怒りの刃を受けるがいい。 リーガン (別の召使に)その剣をお貸し。(剣を取り、駆け寄りざま、背後から突刺す) 第一の召使 おお、よくも! もし、お目はまだ一つ残っている筈、敵の上に与えた手傷は御覧になれましょう。おお!(死に絶える) コーンウォール もう二度と見えぬように、こうしてやる。ええい、胸糞の悪い、まるで腐った生牡蠣のようだ! グロスター 息子のエドマンドはどこにいる? エドマンド、この悪逆無道の行いに懲らしめを加えて呉れ。 リーガン ふん、お前はお前を憎んでいる者に助けを求めている。誰でもない、あの男がお前の反逆を知らせてくれたのだよ。 グロスター ああ、何と言う愚かな事を!それならエドガーは濡衣を着せられたのだ。 リーガン その男を城門の外に抛り出しておやり。(グロスターは連去られる)如何なさいました? コーンウォール 手傷のためだ。一緒に来てくれ。腕を貸してくれ。(リーガンに支えられて退場) 17 〔 第四幕 第一場 〕 荒野 エドガー登場。 エドガー こうしているほうがまだましだ、人間、どん底まで落ちてしまえば、在るのは希望だけ、不安の種は何も無い。 グロスターが老人に手を引かれて登場。 エドガー だが、誰だ、あれは? 父上ではないか、目をどうかなさったらしい! 老人 旦那様、手前はずっと旦那様にお仕えして参りました。それも、ご先代の時からの事、もう八十年にもなります。 グロスター もう行け、行ってくれ! 老人 そのお目では道がお解りになりませぬ。 グロスター この俺に行くべき道などあるものか、それならまなぐ(目)は要らぬ、俺は目が見えた時には、よく躓いたものだ。人間、有るものに頼れば隙が生じる、失えば、却ってそれが強みになるものだ。ああ、エドガー、お前は欺かれた愚かな父の怒りの生贄に! 老人 おい、これ? 誰だ、そこにいるには? エドガー (傍白) ああ、こんな恐ろしい事が! 誰に言えるというのか、俺も今がどん底だ、などと? 確かに、今日までは、ますますひどくなるばかりだった。 老人 気違い乞食のトムだな。 エドガー (傍白)だが、あすからは、もっとひどくなるなるかもしれぬ、どん底などと言うものではない、自分から今がどん底だと言っていられる間は。 老人 おい、どこへ行くのだ? グロスター その男は乞食か? 老人 はい、気違いで、その上乞食という訳で。 グロスター 多少の正気は残っていよう、さもなければ物乞いすら出来まい。ゆうべも、嵐の中で同じ様な男に出遭うたが、俺はそれを見て、人間が虫けらの様に思われて来た。いわば気紛れないたずらっ子の眼に止まった夏の虫、それこそ、神々の目に映じた我等の姿であろう、神々ただ天上の退屈凌ぎに、人を殺してみるだけの事だ。 エドガー 御機嫌よろしゅう、旦那様! グロスター そいつは裸の男か? 老人 はい、左様で。 グロスター それなら、お前は帰ってくれ。そしてこの裸虫に何か引掛ける物を持って来てやってくれ、俺はこれに手を引いて貰おうと思ってい居るのだ。 老人 とんでもございません、こいつは気違いにございます! グロスター 今は末世だ、気違いが目くらの手を引く。命じた通りにしてくれ。 老人 手前の持っております一番良いのを持って参りましょう。(退場) グロスター こら、裸虫! エドガー 哀れなトムは寒いのだよ。(傍白)これ以上ごまかし切れない。 グロスター ここへ来てくれ。 エドガー (傍白)だが、続けなければならぬ。あ、目が、血が流れている! グロスター お前はドーヴァーへ行く道を知っているか? エドガー 木戸に門、馬道小道、どっちも知っている。 グロスター さ、この財布を遣る、お前は感心な奴だ、天がくだし給うた禍を一度に身にうけながら、じっと我慢している。お前はドーヴァーを知っているか? エドガー 知っているとも、旦那。 グロスター そこには絶壁が如何にも恐ろし気にそそりたち、高々と擡げたうなじを前に差延べ、眼下に海を抑え付けている。その縁の所まで俺を連れて行ってくれ。そしたら、俺はお前の担っている苦患(くげん)を取除いてやろう。多少の金目の物は今でもこの身に附けているからな。そこから先はもう案内は要らぬ。 エドガー 腕を貸しな、哀れなトムの道案内だ。(二人退場)