カテゴリ:詩
ふと立ち寄った書店の入り口に、その言葉が貼ってあった。
「わたしはぞうきんになりたい」 えっ!? そのときの驚き。 よく見るとそれは雑誌の切り抜きで、そこには笑顔のおじさんがふたりにこにこと写っていた。 韓国の詩人高銀(こ・うん)とアメリカの詩人アレン・ギンズバーグである。 「わたしはぞうきんになりたい」 それからずっと、その言葉は私のからだの奥に棲みついた。 調べてみると、高銀氏の経歴が、さらに私をひきつける。 朝鮮戦争で絶望し、出家し僧侶になる。 その後韓国の民主化運動にかかわり、投獄、拷問され、今回のノーベル文学賞の候補でもあったとか。 夫は若かりし頃、高銀氏の著作をよく読んでいたらしい。 「当時の民主化運動のヒーローだったよ」という。 そんな人が書いた詩。 あれからずっと、私のからだの奥底で棲みつづけている一遍の詩である。 ・・・・・・・・・・・・・ 「ぞうきん」 風が吹く日 風に洗濯物がはためく日 私はぞうきんになりたい 卑屈ではなく ぞうきんになりたい 我が国の汚辱と汚染 それがどれほどか問うまい ひたすらぞうきんになって ただ一ヶ所でも謙虚に磨きたい ぞうきんになって 私が監房を磨いていた時 その時代を忘れまい 私はぞうきんになりたいね ぞうきんになって 私の汚れた一生を磨きたい 磨いた後 汚れたぞうきん 何回でも 何回でも 耐えられなくなるまで濯がれたいね 新しい国 新しいぞうきんとして生まれ変わりたい (「高銀詩選集:いま、君に詩が来たのか」藤原書店) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.10.22 08:52:26
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