カテゴリ:詩
この人すごい。
久しぶりに没頭して読んだ一冊。 「心に切り刻むように思い出し、悔いてあやまりたい。 寝たきりの母にになって、はじめてすくわれた。 夫をなくした友人の悲しみを思って、耳を澄ます。 気がついたらまわりは、 老いて病んで苦しんで、死んでいく人でいっぱい」 (本書帯のコピーより) あの伊藤比呂美の新刊が、お経の本だよ。 うれしくて飛び上がりそうになる。 彼女によるお経の現代語訳は、全編それは美しい詩であった。 冒頭の「懺悔文」から、もう完全にやられた。 わたしが これまでに なしてきた いろんなあやまちは はるかなむかしから みゃく みゃく とつながる むさぼる心・いかりの心・おろかな心 をもとにして からだ・ことば・いしき をとおして あらわれて きたものだ。 わたしはいま きっぱりとここにちかう。 そのすべてを ひとつ ひとつ 心をきりきざむようにして 悔いていきます。 (「読み解き「般若心経」」朝日新聞出版社) すごいでしょ。 ストレートに入ってくる。 書き写して、持ち歩きたい。 仏教徒ではないくせに、お経大好きの私。 i-podにはもちろんお経が数種入っている。 これまで数々のお経解説本を読んできたけど、この本が私のベストワンとなった。 病気や介護や看取りや別離や老いなどの、自身の苦しみに満ち満ちた生活から絞り出されたような詩(お経)だからこそ、あっけなく心打たれる。 そういう意味では、高史明による「歎異抄」の本もそうだった。 血の通ったお経が好きだ。 本書にはいろんなお経がつまっている。 圧巻は「観音経」の章。 胸が痛くなったあとくすっと笑った。 「地蔵和讃」では泣いてしまった。 最後の「四弘誓願(しぐせいがん)」は、こんな感じ。 ひとびとはかぎりなくいます。 きっとすくいます。 ぼんのうはつきません。 きっとなくします。 おしえはまだまだあります。 きっとまなびます。 さとりはかならずあそこにあります。 きっとなしとげます。 (「読み解き「般若心経」」朝日新聞出版社) 力強くてシンプルで、そしてしなやか。 ちなみにオリジナルはこちら↓ 衆生無辺誓願度(しゅじょうむへんせいがんど) 煩悩無盡誓願断(ぼんおうむじんせいがんだん) 法門無量誓願学(ほうもんむりょうせいがんがく) 仏道無上誓願成(ぶつどうむじょうせいがんじょう) 久しぶりに私のお経熱に灯がついた。 特に、本書で観音経の魅力にやられてしまった私は、早速CDを買い求めるつもりである。 このノリ、まるでお気に入りのミュージシャンを発見した気分。 本書にはこんな風に書かれている。 「観音経というのは「般若心経」みたいな独立したお経ではなく、いわば「法華経」というアルバムからシングルカットされたお経なのであった」 シ、シングルカット・・・(笑)。 ともあれ、年の初めに素晴らしい本に出会えて満足である。 ねんぴーかんのんりき お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.01.25 14:39:36
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