久しぶりに航空機
天山型艦上攻撃機 海軍は九七式艦上攻撃機の後継機として、性能向上を目指した新型艦攻の試作を中島飛行機に命じた。それを受けて昭和16年春に試作1号機が完成した。 それまでの艦攻に比べ大馬力の発動機を搭載し、4翅金属製プロペラやファウラー・フラップ、層流翼の採用など新機軸を盛り込んだ機体は海軍が要求する性能を示した。全長が航空母艦のエレベーター寸法をオーバーするため前方に傾斜した垂直尾翼(しかもエンジン回転トルクを押さえるため機体中心軸から左に3度傾いていた)を持つなど機体形状にも目立った特徴があった。 当機開発中に大出力エンジンである「火星」二五型のテストが進められており、当機にも同エンジン搭載が予定されていたが、九七艦攻の旧式化に伴い新鋭機投入が急がれたため、審査中にもかかわらず「護」発動機装備型を「天山」一一型として昭和18年2月から生産に着手した(少数生産だったので7月には生産が終了しているが、同機の制式採用は8月に入ってのことだった)。「火星」発動機装備型は昭和18年後半から生産が開始されている(「天山」一二型としての制式採用は昭和19年3月)。 戦争中期(マリアナ沖海戦・ブーゲンビル沖海戦)ごろから第一線の主力として活躍し、同時機の各国の攻撃機の中でも最高性能を誇る3座艦上攻撃機であったが、実戦に投入されたころには米軍艦隊の対空攻撃能力が増強(レーダーや近接信管砲弾の実用化)されており高性能の「天山」をもってしても日本海軍の雷撃隊は相当な被害を被った。 ちなみに一二型に装備された後下方旋回機銃(一式旋回機銃)は優秀と名高いドイツ・ラインメタル社製のMG15航空機銃のコピー品であるため、旧来の日本製旋回機銃と口径が異なっている。 機体詳細データ(艦上攻撃機「天山」一二型[B6N2]) 全長 10.78m 全高 3.80m 全幅 14.90m 翼面積 37.20m2 自重 3,010kg 最大重量 5,200kg 最高速度 481km/h(高度4,000m) 上昇限度 9,800m 航続距離 1,743~3,042km プロペラ 定速4翅 発動機 三菱「火星」二五型空冷複列星形14気筒 公称1,680馬力×1基 乗員数 3名 総生産機数 1,268機(全タイプ計) 武装 7.92ミリ機銃×1(後下方旋回)、13ミリ機銃×1(後部旋回)、航空魚雷×1または800キロ爆弾×1または250キロ爆弾×2または60キロ爆弾×6