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カテゴリ:思いつき・・・
深淵色に包まれた深夜の高速道路 アクセルを更にその淵へと踏み込む カーステレオから流れる音楽を 車体に叩き付ける空気の固まりがかき消す
「こんな事を想っていたの」 『どんな事?』 「このまま事故を起こして2人がこの世から消えても今なら悔いはないと」 その言葉を聞いた時に心の奥底で 『嘘・・』 そう呟いた 嘘と呟いたのは彼女が嘘をついているからではない
車は出口の見えない夜空に向かって疾走を続けている 少し間をおいて千蔵は話しだした 『実は千蔵も同じ様な事を考えていた』 「え・・・」
目的の場所に向かう途中で 黒い悪魔の導きに車体を押し潰されそうな感覚を受け止めていた 『このままここで2人の時間が止まったとしてそれはそれで幸せかな』 彼女の横顔をチラッと見つめ黒い悪魔が通り過ぎるのを待った 口に出したら本当に現実となりそうな予感がして 口に出す事を躊躇っていた
彼女と話していると同じ事を考えている場面に多々遭遇した 『気が合うね』 それだけでは済まされない何か特別な共通思考の存在を感じる この共通思考が2人の間の見えない疑心と言う名の壁を丁寧に剥がした
車は気を許したら走る事を止めただろう この世の終わりと言う名の黒い悪魔に飲み込まれて でも・・・ そんな状況でさえ2人でいたなら不思議と恐怖心なんてない 2人一緒にお互いの生を終われる事に幸せさえ感じていた
深淵色に染まり抜いた高速道路を2人の気持ちを乗せたまま車は走り続けた 死が2人を別つまでと心に願いながら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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