「Ｃａｓｔ ｏｆｆ　～小さな君のその手を抱きしめるために～」

場末の飲み屋でバーテンとして働いていた千蔵

小さな街ではあったが観光施設があった

お店に訪れるお客の中に

いつも着物を着た女性がいた

彼女はお千代姉さんと呼ばれた芸者さん

凛と張り詰めた美しさを持った大人の女性

遅い時間に訪れて飲んでも酔った姿を見せない

そんなお千代姉さんが一度だけ酔った姿を見せた

扇の中心には「花」と書かれていた

お千代姉さんは筆を取り加筆した

「あなたの花になりたい」

そう記して千蔵に扇をプレゼントした

寂しそうな笑顔と共に・・・

姉さんは千蔵にとって花でした

ただ・・・

姉さんは誰かの花になれたのでしょうか？

今年も扇の季節が訪れた

姉さん・・・

千蔵はやっと花を見つけたよ

姉さんからもらった大切な扇をもう開く事はないだろう