今日4月21日は長男の誕生日。
長男は今日で30歳になったのだ。
あれは30年前の日曜日の12時15分だった。
単身赴任していた夫が帰っていた、しかも日曜の真昼間に
まさか子供を産むとは思わなかった。
大きな県立病院のその時期は看護実習生らの若い子がたくさんいて、
出産も見学の対象だった。
しかし、実際は恥も外聞もなかったな、ただふんばって産み落としたなあ。
出産8時間後、つまり夜の8時過ぎに初めて歩いてトイレに行った。
トイレの鏡に映った自分の顔を見てみた。
顔全体がふんばった余韻が紅潮した顔全体にあらわれていて、
体中の力を出しきったあとの何かが抜けたような顔だった。
「私はついに母になってしまった、もうこれから一生母だ、
今までの自分ではなくなった、
もう元の一人だけの自分には戻れないんだ」って
鏡の自分に無言で語ったことを覚えている。
私は彼を産んで30年経ったのだ。
29歳での初めての出産だった。
だから私の歳がそれでわかる。
29+30=59歳
もしも自分の歳を思い出せなくなったら、
長男に「お前いくつ?」って歳を聞けばいい。
自分が初めて子供を産んだ日さえ忘れなければいい。
もしも次男の歳を忘れたら、
長男と次男は二歳違いなので、
長男の歳から次男の歳を引くと次男の歳はカンタンにわかる。
同じように私はだんだん年老いてきた父母の歳を忘れることがある。
そんな時、いつもこの方法で思い出す。
母が初めて私を産んだとき25歳だった。
私は59歳なので59+25=84歳なのだ。
そして父が母より3歳上なので87歳なのだ。
楽天プロフィールでちらっと書いたけど、母は先日眼科の診断で緑内障とわかった。
母も4月生まれで12日が誕生日だったが、その日にとても具合が悪そうだった。
元々風邪で内科から始まり、歯茎から出血がひどいからと歯医者に行き、しかし、目が痛いの頭が痛いのと言い、勝手に近くの薬局に一人で薬を買いに行き、目薬を挿したり、点鼻薬を付けたり。
私や父がいくら「そんな市販の薬はダメ。かえって悪くなる、早く眼科に行きなさい。」と言っても言うこと聞かず、「私は昔脳腫瘍の手術をしたからその後遺症だ。二人して自分を責める。いつも私の言うことが通ったことがない、いつも自分の人生はそうだった・・・」などと被害妄想でついに癇癪を起して手が付けられなくなったので、1週間ほどほおっておいたのだ。
夫に「ああいう人の話を聞かないところから認知症始まるのかな?」って言ったら夫は亡くなった自分の母親のことを思い出し、苦い顔でややうなづいた。
そうして母の歯医者の予約日の朝のこと、母がリビングに一人で静かに座っていた。
歯医者の予約は午後からと言う。
そして、「右目の奥が痛くてつらい」と右目を押さえて苦しそうに言う。
そこで私は、「そんなに目が痛いなら歯医者より眼医者が先だよ、勝手に目薬挿したら危ないよ、先に眼医者に行けば。歯医者の予約まで時間があるからその前に行ってくればいいじゃない。」と母に一対一でゆっくり語り掛けたら、素直な態度。
これはいい雰囲気かも・・・
そしたら、タイミングよく父がリビングに入ってきて、父に連れられ母はすんなり素直に眼科に行ったのだ。
その結果が「緑内障」という思いもせぬ病名だった。
母は30代の頃、私がまだ6歳の頃に脳腫瘍を患い、新潟まで手術に行くほどの大病をしたので、ただそのことだけのせいだと思いこんで家族の眼科受診の勧めを今まで頑なに拒否してきたのだった。
何年か前に一度大きな病院で頭の検査もしたことがあったが、原因がわからなかったせいで自分の体質になってしまったから我慢すれば収まると自分に言い聞かせてきたらしかった。
母はその日歯医者の予約をキャンセルして、今後もしばらく目の治療に通うことになった。
病気はかなり進行してるので手術するかもしれないとか、手遅れで失明するかもしれないとか言われながら、今もまだ点滴や点眼で様子を見ている。
医者の方も相手が年寄りで過去にそういう大病をした人間となると慎重にならざる負えないのだろうと思う。
高齢の父母は耳も遠くなり、だんだん私の力が必要になってきてるのを感じる。
父と母がケンカしても仲をうまく取り持つのも、電話や人の応対も、そして病気の時にうまく誘導して病院に行くように仕向けるのも皆私の言葉一つなのだ。
今仙台にいる長男、自宅にいる次男、どちらも男の子の我が家、私が将来年老いたらどうなるかな?
眼科で点滴してしてきた日の母は「今日は楽だ」と言った。
「老いては子に従え」ということばがあるが、私は今回母に「人の言うこと聞きなさい。健康になって初めてあれは健康じゃなかったって思ったでしょ?」と言ったらそっと頷いた母だった。
親子の絆は時々こうして確認できるものだな。。
我息子たちともこうした会話する日が来るかな?
いや、私は娘がいないから母よりも気丈に自分を大事に悪くなったら病院を梯子する。。。
このところ、我が家の胡蝶蘭がますます花盛り。
心安らぐ気持ちにさせてくれるこの花たちも私の子供たち・・・