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テーマ:心のままに独り言(8834)
カテゴリ:思ったこと
先週、仕事で久しぶりに「Outpatient Dispensary」担当になった。
この「Outpatient Dispensary」とは、錠剤の抗がん剤を通院患者さん用に処方する窓口で、患者さんと唯一接する窓口と言っていい。 私が昔「電話地獄のシフト」と呼んでいたのはまさにこのシフトで、病院の他の部署からの電話はもちろん、他の薬局や患者さんたちからも電話が沢山かかってくる。 あの頃は本当に「地獄」と思っていたこのエリアも、最近はそうでもなくなってきた。 患者さんからの質問にも大分答えられるようになったし、他のエリアに電話を回すときも用件によってどこに回せばいいのか大体分かってきた。 でもやっぱり外部の人と接するエリアだけに、ストレスが溜まることも多い。 それはさておき、先週このエリアの担当中に何だか色々考えることがあった。 ある患者さんからの電話。 この患者さんは乳がんの治療によく使われるTamoxifenという薬を飲んでいた。 普通抗がん剤は、値段が高いこともあって3ヶ月分までしか一度に処方できないのだけど、このTamoxifenだけは例外で6ヶ月分処方して良いことになっている。 この患者さんにもドクターは6ヶ月分のTamoxifenを処方していた。 この患者さんが言うには、自分は2ヶ月後にドクターの予約が入っていて、その時にドクターが薬をTamoxifenから他のものに変えるかもしれないとのこと。 6ヶ月分のTamoxifenを貰うと、その大半が無駄になってしまうかもしれないから、今回は2ヶ月分だけ貰えないか、という問い合わせだった。 彼女が言うには、本当は6ヶ月分を一度に貰った方が楽なのだけど、お金を無駄にすることはできないから、と。 ここで彼女が言っている「お金」というのは彼女のお金ではない。 がんセンターに来る人たちは、みんな薬代は一切払わなくていいので、これは「がんセンター」のお金(がんセンターの予算から来るお金)だ。 がんセンターは公立なので、「がんセンターの予算=税金から来るお金」。 彼女はつまり、自分のがん治療の為に使われている、公共のお金を無駄にするわけにはいかないと言っているのだ。 えらい!!! と思った。 カナダではがんの治療に国がこれだけ負担しているにも関わらず、患者さんの中には「あたりまえ」くらいにしか思ってない人も多い。 まあ、他の国の状況をあまり知らないだろうから、自分達がいかに恵まれているのかに気付かないのも仕方ない。 もちろん、自分達がいかに恵まれているかに感謝する患者さんたちもいる。 特に、お隣の国アメリカの同じ病気を持った患者さんたちが、どれだけ自分達で負担しなければいけないかを聞いたら、びっくりする人も多い。 彼女の患者プロファイルの年齢を見たら、結構高齢の方だったし、少し遠くに住んでいたので、「もし2ヵ月後のドクターの診察の後にもTamoxifenを使い続けることになったら、お宅の方に残りの分のTamoxifenを郵送しますよ」とオファーした。 薬の郵送代ももちろん「がんセンター」もちだ。 彼女はタダで郵送までしてくれるなんて!とすごく感動したようで、 私に何度も御礼を言った。 彼女は、「自分はいつもがんセンターの人たちからは本当に良くしてもらってて、 いつも感謝している。 自分は本当に恵まれている」 と感謝の気持ちを何度も述べて電話を切った。 こういう電話の後はやっぱりとても気持ち良い。 私が思うに、彼女はいつも人に感謝の気持ちを示しているから、周りの人も彼女に対して余計に親切にしてあげるのだろう。 確かにがんセンターのスタッフはフレンドリーでしっかりした人たちが多いが、 そうやって「いつも良くしてもらってる」「ありがとう」と言われたらやっぱり嬉しいし、もっと良くしてあげようと思うのが人間だと思う。 ・・・と、良い気分になったのもつかの間。 その直後になんだか正反対の患者さんから電話がかかってきた。 長くなりそうなので次に続く。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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