859400 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

灰色の空のむこうには…

灰色の空のむこうには…

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

しまずんば

しまずんば

Headline News

Calendar

Recent Posts

Category

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

MIDNIGHT★B… 青葉 蓮さん
○●Precious… ☆.。.:*・゜shooting star゜・*:.。.☆さん
豊かさを高める成長… Miyuki♪さん
川の流れのように ゆっちだもん8327さん
掌の砂、流れる雲、… ゆっちですよさん

Comments

zer@ aspenly A unique site that allows children to r…
http://buycialisky.com/@ Re:コインパーキングでの攻防…(06/25) discount brand-name cialisdiferenca do …
http://buycialisky.com/@ Re:「結婚しない」…(12/20) over the counter generic cialisbuying c…
http://buycialisky.com/@ Re:幸せ…(07/30) where to buy cialis soft fromwanneer ci…
http://buycialisky.com/@ Re:「DQNに彼女寝取られたので復讐してやったww」…(01/08) inexpensive cialis softwomen opinions o…
2007.08.02
XML
カテゴリ:月下の恋
ああ、今夜も月がきれいだ…。


いつの頃からか、気がつけば空を見上げていた。
特に何かを探すという訳でもなく、ただそこに
空があるというだけで。いつの頃からか、人は
空を見上げることを忘れたと思う。ただただ、
辺りを見渡すことがきかない塀の中に投げ入れ
られた毎日を繰り返している。それに不満を
感じるほどには気概は枯れ果ててしまったが、
それでも自由を感じたいときがある。そんな時は
空を見上げるようにしている。寄せては返す波の
ように、空はいつも違う形をしている。日々の
雑多な些事にとらわれて息苦しくなったとき、
無限に広がる空を見上げることで縛られた世界
から解放された気分になれる。

青空も好きだか、何よりも僕が好きなのはやはり
夜空。漆黒に塗りつぶされた闇を照らす月明かり。
この道標があるからこそ、僕は迷うことなく前に
進めるような気がする。僕を信実の下に指し示す
やわらかな光と、それを囲むようにして瞬きを
繰り返す無限の可能性たち。今はもう以前ほど
光を数えることが出来なくなったのは、僕がもう
大人になってしまったからか。それでもなお、
夜空を煌々と照らし続ける星たちは、僕にもまだ
何かやれることがあると勇気づけてくれる。


月を見上げていると思い出す歌がある。それは
まだ学生の頃、授業で習った古典の句。当時は
そんなに古典なぞには興味がなかったが、この
年になったからこそ、その句の味がようやく
わかってきた気がする。

「月やあらぬ春や昔の春ならぬ
 わが身一つはもとの身にして」

月や季節は移ろいゆくというのに、自分だけは
昔のまま変わらずにいる、そんなことを歌った
伊勢物語の一句だ。最近、月を眺めながらこの
句を思い出すと、その歳月の重みというのを
強く感じてしまう。僕はいつまで同じことを
繰り返しているのだろうと。

小さい頃、夢があった。子供の頃、希望があった。
学生の頃、理想があった。そして、社会人になって、
現実があった。そう、昔から思い描いていたことは
何一つとして実現できないままに、今に至っている。
夢や希望や理想に破れ、ただ現実に折り合いをつけ
ながら生きている。しかし、ときどき叫びだしたく
なる。これって果たして生きていると言えるのかと。
ただ、生かされているのではないかと。何を幸せと
感じ、毎日を生きているのか、生きてきたからには
何かしらの意味があると信じたい。生まれてきた
ことに理由があったのだと思いたい。だが、現実は
何も変わることなく、変わろうと思いながらも
居心地のいい毎日に流されている。自分から行動を
起こすのではなく、何か起きないかと期待しながら
生きている。それは自分の意志では動くことの
出来ない死者となんら変わることはない。今まで
何もなかったのに、これから何か起こると期待する
のはあまりに楽観的すぎる。生きる屍のごとく過ごす
ことで、心は毎日朝に生き返り、夜に死んでいくのを
繰り返すことで磨り減り、自分という存在を見失い
そうになってしまう。仕事帰り、帰宅の途に着く
ために電車を待つ人々の群れに生気を感じることは
出来ない。電車は三途の川を渡す渡し守のように
一日の終焉を感じさせる。

そんな自分殺しの日々から抜け出そうと、助けを
求めたことがあった。今まで変わることが出来な
かった自分に嫌気がさし、誰かに助けてほしかった。
いや、助けてほしいなどというのとはちょっと違うが、
誰かと一緒に今までと違う毎日を過ごしたかった。
しかし、僕が手を差し伸べた相手は誰もがみな、
その手を掴んでくれなかった。僕の足元は崩れ落ち、
奈落の底へと落ちかかっているのに、誰もその手に
気付くことなく通り過ぎていった。僕はその場から
一人で這い上がることもできず、いつ落ちるかわから
ない恐怖にふるえながらもいつか救いの手が差し伸べ
られることを待っている。誰か僕に気付いてほしい、
心の中ではそう叫び続けているが、その声が誰かに
届きそうもない。


そうして今日も僕は自分を殺しに家に帰る。帰宅の
途中に月を見上げ、明日こそ僕を正しき光の下に
導かんことを祈りながら、家路へと歩を進める。
家への道中の半ばに、僕のお気に入りの場所がある。
そこは大きな公園で、周囲を桜に囲まれた春には
美しい景色が広がるところ。今は葉桜でしかないが、
公園への入り口、階段を上ったところにある一際、
大きな桜から眺める夜空は格別なものがある。今日も
また、その桜の下で死ぬまでの最期のひと時を過ごす
べく足を向けると、先客があった。こんな夜更けにも
関らず誰だろうと、普段なら帰るところだったが
逆に好奇心の湧いた僕は近づいていくと、ほのかに
照らし出された光に浮かぶその姿に、僕は月を見上げる
ことを忘れて見入ってしまった。


地上に舞い降りた月に、僕は思わず手を伸ばした…。



「月下の恋」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.08.02 22:19:51
コメント(0) | コメントを書く
[月下の恋] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X