灰色の空のむこうには…

今回のタイトルは「因果応報」で、消費税と公共事業
の手抜き工事をテーマにしていた、いかにも定番で
ベタな展開でしたが、仕事人という味付けがされている
と楽しみに見ることが出来るから不思議なものです。


公方様と縁続きと言われる住職により、飢饉や大火と
いった災厄から江戸の街を守るために大仏が建立される
こととなり、材木問屋松木屋の指示で宮大工たちが
集められます。

そんな宮大工の中、上方にまで名が知れ渡っている
棟方宗兵衛は松木屋が手配した材木が粗悪なものである
ことに気付き、また大仏の図面を見ると手抜き工事で
あることを見抜いて寺社奉行に訴えようとしたところ、
家に押し込み強盗が入り家族全員斬られて火を付けら
れてしまいます。

からくり屋の家に泊まっていて難を逃れた棟方宗兵衛
の息子は、恨みを晴らすために仕事人に依頼するという
物語でした。


初っ端から大仏を建立するという話が出てくるのですが、
どうして普通の大仏ではなく子宝大仏で江戸の街を災厄
から守るのかが疑問に思ったり。

経師屋と中村主水の魚屋？での店先の絡みや、渡辺さん
と中村主水のメザシの取り合いなど、ちょこちょこと
出てくる仕事人たちのエピソードは結構面白かったです。


悪役としてはベタに住職と寺社奉行に松木屋と宮大工の
棟梁という構図で、松木屋が棟方宗兵衛の葬儀に百両の
金を包むのですが、そのお金が仕事料になるというのは
まさしくタイトル通りの展開は上手いものだなぁと。

全部のお金を仕事料にしようとした息子に、頼み料は
五両ということで後は持って帰らしたのですが、いくら
住職とはいえ公方様の縁続きの人間が絡んだ仕事に五両
は少なすぎるような気もするんですが。


そして今回の見所は何と言っても仕事シーンで、これ
まで微妙なポジションだったからくり屋が、今回は
きっちりと妙なからくりでトドメを刺していまして、
今までの謎な糸を首に巻きつけるだけだったらどこぞ
の三味線屋のバクリで蛇のからくりの必要はないじゃん
と思っていたのですが、ようやく新キャラの仕事と
して定着しそうな。

さらには松木屋の番頭とごろつきを夜道で大立ち回り
をして瞬殺で堂々と切り捨てた渡辺さんに、松木屋を
あっさりと刺す中村主水、説法をしている住職の背後
から一刺しで仕留めた経師屋など見せ場がいろいろと
ありましたが、全員の仕事人が鮮やかに仕事をした後
で、あれ？寺社奉行はと思っていると、ラストでまた
渡辺さんの仕事が。


これまで一人一殺というイメージがあったのですが、
最後に一人で部屋で碁を打っている寺社奉行のところ
に現れる渡辺さんの影。

不穏な雰囲気に蝋燭を消し怪しいシルエットに気付いた
寺社奉行は影の映る障子ごと刀で突くのですが、ひらり
と渡辺さんはその刀を避けると抜きつけざまに刀の刃先
を斬り、そして障子ごと寺社奉行を斬りつけるという
かっこいい仕事っぷり。

なのですが、よくよく冷静に考えたら渡辺さんの刀を
抜きざま刃先を斬りおとした後、振りかぶって上段から
障子ごと斬りつけるというムダな動きが気になってしま
いました。

僕だったら刀を抜きざま下から斬り上げ、返す刀で斬り
つけるという、いわゆる燕返しの要領でやればひとつの
動きで済むのに、ふたつの動きをするって渡辺さんらしく
ないなぁと、せっかく名場面のシーンだっただけに少し
残念な気がしました。