灰色の空のむこうには…

勝てば官軍と言われますように、歴史というものは勝者の
側から描かれることがほとんどです。

そのため、史実として残っている事柄でも勝者側にすれば
都合の悪いことはそれほど取りあげないどころか、それ
とは別のインパクトある事柄をとかく強調することで情報
操作しようとします。


今回の蛤御門の変は、そもそも京都における権力争いの中
で京都を追われた長州藩による、力づくで都での中心勢力
だった頃の栄華を取り戻そうとする暴発であり、こうして
敗者側から描かれているからこそ、包み隠さず事実を描写
しているのはすごく良かったです。

正直、幕末の中でも長州藩が好きな僕からしても、安政の
大獄から蛤御門の変までの暴走は共感しかねるものがあり、
いっそのこと今回のように完膚なきまでに敵方として描か
れるほうが正しい認識と思います。

長州藩の凄さというのは、紆余曲折しながらいろいろ代償
を払いつつも道を模索し続けた末に大局へと至ることに
あり、個人的には犠牲の上に成り立つそれまでの積み重ね
のプロセスが重要だと思うので、今回の大河のように言い
にくいことでも正しく伝えていただきたいです。


そして、今回の戦いによる戦火で京都市中に多大な被害が
出たのですが、あくまで今回の争いは藩と藩というたかが
士族だけの争いに巻き込まれたのであって、そこに暮らす
市井の人々にとっては政局だの権力だのはどうでもいい話
のように描かれていたのがすごく印象的でした。

あくまでまだこの時点では、どこの藩も我がの利権を追及
する立場であり、大きな意味での国という観点から日本を
憂いる者が現れていないということを暗に示していたかの
ように思えました。