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灰色の空のむこうには…

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2013.09.16
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カテゴリ:「新選組!」

一刀斎夢録 上


真剣勝負に名利は何もない。死にゆく者と生き残る者
のあるだけじゃ。すなわち正々堂々の立ち合いなど
あろうものか。おたがいひとつしか持たぬ命のやり
とりじゃによって、卑怯を極めた者の勝ちじゃよ。



「飲むほどに酔うほどに、かつて奪った命の記憶が甦る」
―――最強と謳われ怖れられた、新選組三番隊長斎藤一。
明治を隔て大正の世まで生き延びた“一刀斎”が近衛師団
の若き中尉に夜ごと語る、過ぎにし幕末の動乱、新選組の
辿った運命、そして剣の奥義。

新選組隊士吉村貫一郎、彼のことを知る人物たちを取材して
話を聞いていくことで多角的にその人となりを現した名作
「壬生義士伝」

その証言した人たちの中で一際異彩を放っていた斎藤一こと
“一刀斎”が問われるがまま語るその激動の半生は、聞き手
の中尉ではないですが読み進めて行くうちにまさにあの混乱
を極めた幕末の時代を見ているかのような怖いくらいの現実
味があるものでした。


現代でこそ時代を経たことで発見された資料によりおそらく
正しいであろう当時の状況を知ることが出来ますが、明治
から大正へと移り変わる物語の当時には、勝者の都合を押し
つけられた歴史教育と講談師の弁でしか知ることが出来な
かった時代なだけに、当事者による語りの中に込められた、
静かな中にも力ある魂の雄叫びを感じました。

さらには御一新以前の武士の生き方や状況を、その時代の
常識と照らし合わせて語ることによって見えてくる当時の姿
は、真偽はともかくこれまで見知ってきた現代の歴史観すら
一変させるような危ういものもあり、断片的な事実をいくら
積み上げようと真実の姿は見えてこないということを改めて
思い知りました。







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Last updated  2013.09.16 22:57:15
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