Story of Redstone side.B‐1
我輩は『ぽち』である。名前は主の紫泉さまがつけてくださった。我輩はもんすたぁである。昔はヒトを襲ったりもしたが、今は主が気をわけてくれるし、主といると自然の息吹きが感じられる。我輩は主のはぢめてのペットだった。主は我輩を、どこに行くにも連れて行ってくれたものだ。主の役に立てるのなら、たとえ日の雨が降ろうと、氷の刃が突き刺さろうとも、かまいはしなかった。ある日、主は言った。「ぽち、今までがんばってくれてありがとう」あぁ! ついに来たのだ、別れの時が!我輩は、主について行きたいのに!我輩は、必死に主を見つめた。別れたくないよ! もっとそばにいたい!「ごめんね、自由を奪って。仲間と離れ離れになって」いいえ!そんなことはないです!楽しかった。みんなが優しくしてくれて、嬉しかったんだ!主! 我輩を連れて行って!我輩は言葉にできぬ気持ちを伝えたくて、主の足下にうずくまった。「ぽち……」「お前を連れていくには、この先は危ないから。だからお別れしようと思ったの。でも…」主のそばにいられるなら、我輩はどんな形でもかまわぬのだ!我輩は、強く強く願った。すると、主の笛が優しい音色を奏で、我輩の体を光が包み、そうして我輩は……。一冊の本になった。今は主の鞄の中で、主の声を聞いている。我輩の名前を時折呼んで、優しく表紙をなでてくれる。我輩は、それだけで、満足なのだ。