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カテゴリ:テキトーな映画レビュー
視覚があるかぎり、人間は美しい物につい見とれてしまいますね。
対象が人であれば、若くて綺麗でピチピチしている方に目が行ってしまうのが本能というものでしょう。 たとえばアイドル。 最近では中年に差しかかったアイドルやグループも現役で活躍するようになってきてはいますが、一昔前なら多くの人にとっては三十路を過ぎたアイドルは用済み同然でした。 毎年数えきれぬほどの新人アイドルがデビューして、芸能界の椅子取りゲームをくり広げているわけですから、目新しさ、カリスマ、才能、これらが持続しないアイドルは淘汰されていく運命ともいえます。 今回は大衆が求める美を追求した結果、破滅の道が待っていたという映画『ヘルタースケルター』[2012年] をご紹介します。
映画『クローズド・ノート』[2007年] 舞台挨拶の「別に……」発言でお馴染みの沢尻エリカの女優復帰作というだけでなく、裸体表現あり、濡れ場ありということで公開前から話題となっていましたね。 わかりやすいあらすじ女子がなりたい顔ナンバーワンに輝いたトップアイドル、りりこ。 書店にはりりこの写真がズラリと並び、完璧な美貌と抜群のスタイルで芸能界でもひっぱりだこ。 しかし、りりこには秘密があった。 皆が憧れる彼女の美貌はすべてが作り物だったということを。 萎れた花は枯れて消えるだけ。 そんな中、新人モデルが同じ事務所に。 生まれ持った美貌とカリスマをあわせ持つ最強の新人を前に、隠しきれなくなってきた手術の後遺症と、かすみ始めた自分の存在におびえるりりこ。 りりこはどうなってしまうのか? みどころ1. ぬるいエロ 沢尻エリカは透き通るような肌と長い脚の持ち主で、日本人離れした顔の小ささとリカちゃん人形のような顔の造りですので、この作品の被写体としては見事なハマり役だと思いました。 芸術作品として観賞するだけでも一見の価値はあるかもしれません。 ただ、裸体表現を使った映画プロモーションは杉本彩主演映画『花と蛇』[2004年] でやりきった感があるので、あまりそれを話題にしても客層はそれほど食い付かないのではないかと個人的には思いました。 エロさの基準には個人差があるので何とも言えませんが、一般的には胸、尻がある程度張っていて肉感的であること、ちょっとしたしぐさが卑猥であることなどが挙げられますから、これらの条件が備っている女優なら、映画という表現目的であれば着衣のままでも十分に演出できたのではないかと思います。 エロという意味では『ヘルタースケルター』も『花と蛇』と同様、モデルが綺麗すぎるという点が災いして、脱いでもマネキン人形を見ているようでエロ効果は薄いですから、沢尻エリカの裸体が拝めると鼻の下を長くして観賞しても肩透かしを食らうことになります。 それに対し、ドンくさいマネージャー役の寺島しのぶがイイ味を出しています。 りりこ様一筋なところ、日本人的なのぺっとした体形、少女のような恥じらいを見せるところや、りりこ様とヒモ男に献身的に尽くすところなどは、このままズルズルと流されて何でもやり兼ねない危険さをはらんでおり、だんだんと見てはいけないものを見ているような気にさせられます。 2. 若さという武器はタイムリミットつき これは二十歳を過ぎた人なら誰もが通る道ですね。 女性なら結婚の二文字が目の前をチラつきはじめ、若さだけで勝負できるのは今のうちだと思う人も多いことでしょう。 近年は晩婚化がすすみ、再婚も当たり前のようになってきてはいますが、パートナーを選ぶにあたって、まずは若い方に目が行ってしまうのが種の保存プログラムに組み込まれた遺伝子の意志ともいえます。 3. 替えはいくらでもいる 人間はより優れたものを求めたがります。 より若く、より美しく、より賢く、よりたくましく。 しかし、そのいずれも、生きているかぎり競争の場に並べられる傾向にあります。 よりよいモノを持っている人材とはいつでも交代させられる可能性があるのは、日常生活でも普通に起こっていますね。 そのうち最も賞味期限が短いのが、見てくれの美というものなのかもしれません。 4. 寒い表現がどうにも止まらない男 ちょっと前のフランス映画やドイツ映画などで、キャストが唐突に詩的表現を口走ったりすることがありましたが、それをこちらでは詩的ポジションとはかけ離れた検事がやってくれちゃっています。 のっけから薄ら寒いんですこれが。 「いいね、朝のコーヒーは。カップの中に漆黒の笑みが溶け込んでいるようだ。」 ちょっと小洒落た物書きが綴ってしまいそうな表現ですが、ひとたび口に出すと周りはリアクションに困るだけです。 アシスタントもツッコんでよいものか苦笑い。しかしこれは序の口で、話が進むにつれどんどんエスカレートしていきます。 この調子で無表情のまま最後までクサいセリフを吐きまくった大森南朋ですが、撮影の際にセリフを口にしながら笑ってしまったのではないかと要らぬ邪推をしてしまいます。 5. 人生はやり直せる トップスターになる夢をかなえたりりこ。 りりこはトップスターの地位から転落することを常に恐れていますが、新人モデルの芸能界入りの動機はスカウトされたから何となくといういい加減さ。 モデル業もどうせ長くは続けられないとわかっているから、いずれはやめるつもりで今を楽しんでいる感じ。 必死さのかけらもないにもかかわらず、りりこの仕事をどんどん奪っていきます。 しかし、たとえ第一線で活躍できなくなっても、才能があれば活路はどこかに見つかるものです。 それを切り開くかどうかは自分次第。 これは若いというだけで慢心せず、できるうちに自分の内面を磨いておけという、若い世代のひとたちに向けられたメッセージのようにも取れます。 どうでもいいトリビア1. ニナ・ハーゲン パンクロッカー、ニナ・ハーゲンのオペラがかった Naturträne をバックにいろとりどりの雑誌の表紙、女子高生たちのきらびやかなネイルアートが万華鏡のようで、すべてがコロコロと移ろいゆく様子が見事に表現されていますね。 ちなみにニナ・ハーゲンのファッションもきゃりー・ぱみゅぱみゅ顔負け(あちらの方が元祖)ですが、元専属デザイナーはジャン=ポール・ゴルチエだったりします。 2.映像美と音楽の意図的な不調和 個人的には蜷川実花監督の映像の色づかいが好みですが、全編を通じて原色、七色、あちこちと落ち着きのないカメラワークに映像酔いする方もいらっしゃるかもしれません。 デヴィッド・リンチ監督、ティム・バートン監督、ターセム・シン監督あたりの世界観を好きな人なら映像だけで十分楽しめるでしょう。 前述のニナ・ハーゲンの狂人的な歌声そのもののような映画で、たまに音響ミスなのではないかと思えるほど音楽が大きくてキャストの声を殺している部分もあります。 本来ならクローズアップしながら情景説明をするべきところを意図的にズームアウトしていたり、俯瞰ショットの多用で全体的に落ち着きのない印象ですが、この映像はりりこが精神の安定をドラッグに求め始めたころから説明がつきやすくなっています。 全身整形でまやかしの美を手に入れた瞬間から、バッドトリップ街道をトップスピードで突っ走ってきたりりこの生きざまには安定の道などないのです。 ただ、りりこ、マネージャー、ヒモ男、検事など、ストーリーの重要なカギを握るキャストの心理描写がもっと細かく撮られていたら、より感情移入しやすくなったのではないかと思います。 ←こちらからこっそりコメントでけます お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.12.23 17:54:51
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