映画「ニュースの天才」(ビリー・レイ監督)を観て考えたこと。書くものの功名心などについて。
20日の午前11時付近です。 日曜日の昼間に、こんなブログを書けるなんて ここ数年の勤務状態じゃあ、あんまり考えられ なかった。やはり、仕事も含めて一杯一杯だった んだな、と。 最近は少なくなってると思うけど、会社の方で ここを覗いてる人(JIJI.CO.JPの足跡がやっと 減ってきた。会社から覗くなよ、ほんま。休み 時間の可能性もあるけど、楽天ブログは分かる んだから)、この休み中に僕がやってることは 主治医公認のリハビリ作業ばかりだからね。 まあ、精神を病んでるとこまでいってないから、 普通に生活して、仕事してないだけ、って感じ。 それと薬の副作用で眠たいんだよね。抗うつ剤 が眠いのは聞いたことがあるけど、神経を和ら げる薬はほぼ例外なく眠気が副作用なのも分か った。 で、今日は。 久しぶりに、見ていないDVDを観たので、 考えたことを。 前から観たいと思って見落としていた「ニュースの天才」 (ビリー・レイ監督、ヘイデン・クリステンセン主演= 2003年)がそれで。いや、職業柄(スポーツを中心にした 記者)、どうしても記者もの、とかは惹かれるのですが、 これはその中でも“絶対”に近かった。 捏造記事を書き続けて、名声を得たアメリカの実在のジャ ーナリストの話だったからねえ。いや、僕も何度か小説で そういうねつ造に手を染める記者の話を書こうとして、資料 とかも集めていた(伊藤律会見記とかね)けど、まだ果たし てなくて。 結果。 映画の出来栄え以前に、やはり事実だったことが面白かった。 同じ雑誌(もちろん実在の高級紙)の記者仲間、編集者 のすべてが数年とは言え、だまされ続けたっていう事実 もすごいし。 淡々と描いているのは好感が持てた。 実在のねつ造記者=スティーブン・グラスの内実まで描け ているか、というと大いに疑問があるけど、周りの人物、 特に新編集長チャック(ピーター・サースガード)の静かな 好演が光ってる気はしました。それと、映画を捧げられて いる前編集長のマイケル(ハンク・アザレア)がイラク戦争 の取材中(2003年4月)に殉職されているという事実も。 まあ、ねつ造するやつの頭の中まで描ききるのは難しいだ ろうね。正直に告白するけど、僕だって何度も“こう書いた ら面白い”っていう経験はしてるし、一つ一つは事実でも つなぎあわせれば大嘘になったり、思わぬ人を傷つけたり ってあるから。それが嫌で、署名のあるスポーツ新聞社から 名前の出ない通信社に移ったのも。いや、もちろん一番大き かったのは五輪に行くチャンスが広がると思った(誤解だった のは何度も書いてる通り)からだけど。 それにしても。 アメリカってやつは、懐が深いというか。 この「ニュースの天才」って映画自体がそうだし、ねつ造 記者のグラスがもう社会復帰を果たしている。ロースクール を卒業したっていうんだから、弁護士業かな。頭がいいのは ねつ造記事を信じ込ませたことで世間に知れ渡っているから、 本当の悪人専門でやれば商売、成り立ちそうだし。 自分のねつ造経験も本にしてるっていうし。 したたかだよね。 DVDには本物のグラスのインタビューもついてたけど、 クリステンセンって、ほぼ容姿、そっくりに演じてたんだ ってよく分かる。短いインタビューの内容だけなら、映画の 主人公の性格も似通っていそうな感じだった。 これは映画館じゃあ分からないから、高いDVD(4000円近 くした)買った価値はあったと思う。 さて。 もう、五輪に一度は行きたい、以外報道者としての 野心はないから、僕がねつ造記事を今後書くことは ないと断言出きる。ただ、事実とずれた原稿(解釈の 間違い)とか、細部の間違いのある記事はまだいくつか 書くに違いない。その際に、“わざと”の気持ちが あるか、どうかがすべてで。 DVDの付録に入っていた現実のグラスの記者仲間、 編集者が「彼とは顔も見たくない。晴れの日に今日 は晴れていると彼が言っても信じない」と言っていた のは興味深いというより、人間そんなもんだろうな、 と思って。決定的な嘘を付かれると、人との関係を 再構築することなんて不可能。 この事実は、それこそ万国共通じゃないか、と思う んだけどどうだろう? まあ、今日はこんなもんで。 高橋尚子が走り始めたのでテレビ見ます。 現場じゃないんだよなあ。 高橋さんの出世レースの名古屋国際マラソン は、現場で取材したよ。いつだったのかさえ 忘れたけど。 (下)「ニュースの天才」 でも、写真は「ニュースの天才」じゃなく、発掘した私の 大学時代のマスコミュニケーション論の授業での1980年9月 8日に関学大社会学部で受けた戦後の三大誤報≒虚報の授業 のノートコピーを。その後、朝日新聞のいくつかの虚報とか あったから、ほんまにこの授業の内容は古いものになってし まってますが、取り上げられていたのは、朝日新聞の「伊藤 律会見記」(昭和25年9月)、長崎新報の「日航機衝突事件」 の際の墜落で亡くなったはずの漫談家・大辻四郎のインタビュー (昭和27年4月)、共同通信の「セイロン島での日食観察成功」 =実際は天候不良で失敗(昭和30年6月)。 最後の共同の失敗なんて、実はよくあるんですよ。 オレが言ってはいけないけど、速報を重視すれば、すぐ 起こってしまうミスで。予定稿を書く限り、どこの通信社、 新聞社にも起こりえることだと僕は思ってます。 起こっちゃいけないことだけど。