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カテゴリ:大好きな人
「おじいちゃん、気持ちいい?」
「お兄ちゃん、よかったね。」 そんな事をつぶやきながら、花を供え、墓石を拭く。 8月15日。家族の魂と最も近い日。 家族揃っての墓参り。 一人ずつ順に石の前に立ち、祈りを捧げる。 蝉の声がする森が茂っている。 空は青く、日は痛いほどに地上を照らしている。 まとわりつく湿気も、今日ばかりはその乾いた喉を潤わす。 8月15日。戦いに敗れた日。 多くの命が花火のように散った、あの戦争。 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と 刻まれた石棺の前で手を合わせる。 ドームの向こうから響いてくる野球観戦の歓声。 何十年と植物さえ生えないと言われたこの土地に こんな日が来る事を、彼等は夢見る事が出来ただろうか。 ココロを癒すためでもなく、願い事をかけるためでもなく、 ただ、「哀しい」という想いと共に在る事。 一緒に「哀しいね」と、静かに傍に人がいてくれるという事。 泣き続ける蝉時雨の中 佇む人の美しさよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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