是枝裕和「万引き家族」神戸国際松竹
三宮の国際松竹という映画館に30年ぶりに行きました。この映画はカンヌ映画祭で高い評価を受けたということで評判だそうですが、封切り日の一番館(今はそんな言い方はしないのかな?)が老人会の集会のようでした。 まあ、ガラスに映る自らも、その場に何の違和感もないわけで、映画館というのはヒマな老人の徘徊先にうってつけということなんでしょうか。
さて、映画はというと、安藤サクラさんという女優さんがとても印象に残りました。「目」がいいんです。
リリー・フランキーさんは、いい加減さの極みを生きる、ダメ男ぶりが、ちょっとずぬけている感じがしました。 お二人とも、映画で出会うのは初めてですが、ファンになってしまいました。
子役に食われてしまいそうな設定ですが、樹木きりんや柄本明のありさま,存在というべきなのかもしれませんが、役柄においても、映像の印象としても、そこにいる老人として、子どもたちをシッカリ抱き留めているのが、さすがでした。
映画を見た翌日の朝刊で、監督の是枝裕和が、文部大臣の表彰だかを断ったという記事を読んで、なるほど、そうでしょうと納得しました。この映画は、そういうふうに持ち上げて、胡麻をすることを許さない映画だと思います。
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
撮影 近藤龍人
音楽 細野晴臣
キャスト
リリー・フランキー(柴田治)
安藤サクラ(柴田信代)
松岡茉優(柴田亜紀)
城桧吏(柴田祥太)
柄本明(川戸頼次)
樹木希林(柴田初枝)
2018年・日本・120分 2018・06・09国際松竹no1
追記
その後、初枝役の樹木希林さんが亡くなりました。テレビドラマの「時間ですよ」(1970)で異彩を放って登場した悠木千帆という、若いんだか年寄なんだかよくわからない女優のことを覚えています。最後まで、独特の演技の人でした。 安藤サクラさんも、朝ドラで話題ですが、テレビを見ないぼくは、映画の人になってくれればいいのになと願っております。
追記 2019・07・07
徘徊を始めて、ほとんど最初に見た映画でした。あれから、一年が経ちますが、この映画を超える印象の日本映画にはまだ出会っていません。
先日、社会派映画と評判の「新聞記者」を見ました。好感を持ちましたが、社会に対する切込み方に、何だか、純情なものを感じて、良くも悪くも「甘い」と思いました。
長い間、映画を見ていなかったぼくは、何も知りませんから当てずっぽうになりますが、「海街ダイアリィ」の監督が、この映画を撮るには、かなりな覚悟をしたと思いました。
私たちが、なにげなく暮らしているこの国の社会は、もうすでに「壊れている」ことを語るためのリアルな現実認識を、どう差し出すのか。ごまかしではない世界を描くには、才能以上に勇気と覚悟が必要だったに違いないということです。
時のでたらめな権力の表彰状が、唾棄すべきものだという態度もまたしかりでしょうね。
次に彼が、どんな映画を撮るのか、期待以上に、ある種の不安を感じます。彼が、差し出すに違いない匕首のような映像に、ぼくはついてゆけるのだろうか。そんな感じですね。
追記2020・01・07
是枝裕和が「家族を想うとき」を撮ったケン・ローチをたずねていくテレビ・ドキュメンタリーを昨日観ました。番組ではケン・ローチの映画作りと是枝のそれが語り合われていてとても面白かったのですが、「万引き家族」の終わりころ、安藤サクラさんが演じる柴田信代が婦人警官の尋問で涙を流すシーンについて、婦人警官のセリフを台本では消していて、何も知らない安藤さんに、いきなりセリフを聞かせ、安藤さんの涙の演技を撮ったという話が出て来ました。
映画のそのシーンは、とても印象的で、ぼくの中での安藤サクラという女優さんの位置を決定づけたのですが、この話は胸を打ちました。
ケン・ローチという監督が、同じような手法で、ドキュメンタリータッチの映像を撮っていることは何となく知っていましたが、是枝監督もその手法に学んだそうです。
映画の映像は、必ずしも作り事の演技ではないということにドキドキしました。
追記
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