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中井久夫「時のしずく」(みすず書房) 2005年の著書「時のしずく」(みすず書房)の中に、「21世紀に希望を持つための読書案内」(筑摩書房)にも載っている「秘密結社員みたいに、こっそりと」というエッセイがあります。最近出ている「中井久夫集」(みすず書房)であれば第7巻「災害と日本人」に収められています。おもしろいから紹介します。
読書は、秘密結社員みたいにこっそりするものだ。私は推薦図書は書かない。書店で手に取ったときに、まるで自分を待ちかねていたかのような感じがする本が『あなたの本』だ。立ち読みして文章が目に飛び込んでくるようだと、絶対に買いだ。自分の財布を痛めて買う。図書館の本はすぐ期限が来る。借りた本は読もう読もうと思っているうちに時間が経って返し辛くなる。もらった本は真剣に読まないかも。 冒頭部分を少し省きましたが、これで、ほぼ全文です。本人が非常に出来る人ですから、本人もおっしゃっていますが、極論と言えば極論ですが、面白いと思っていただいた方は、できれば中井久夫という人の他の著書に出会っていただきたいと思います。 高校生なら受験勉強にバカにされないために。大学生なら面白く勉強することのヒントとして。お子さんをお育てになっている年代の方なら、お子さんたちにベンキョウは楽しいんだと伝えるために。ぼくのような老人であれば、もう一度勉強を始める意欲を掻き立てるために。 いや、どなたであっても、今日の穏やかで、意欲的な生活のために。 精神科の専門的論文は無理だとしても、たくさん書かれているエッセイや、詩の翻訳は、素人にだって読むことは出来ます。もちろん繰り返し読み直さないと分からない文章もあるかもしれません。しかい、一冊読み通していただけたなら、こんな「案内」を書いている気持ちが、少しは理解していただけると信じています。でも、やはり、むずかしいのでしょうか?(S) 追記2022・08・11
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