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カテゴリ:読書案内「映画館で出会った本」
綿井健陽「リトルバーズ- 戦火のバグダッドから」(晶文社)
2019年の春、どういう偶然なのか「イラク戦争」の内幕暴露映画を3本続けてみた。「記者たち」という映画を見たのは偶然だったが、見終えてみると、ぼくの中の何かに火がついた感じで、「バイス」、「バグダッドスキャンダル」と見ながら、思い出した。 綿井健陽のドキュメンタリー・ブック「リトルバーズ」 今から15年前、2004年のことだが、当時の高校生向けの「読書案内」でぼくはこんなふうに書いている。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 先日、体育館で観た『リトルバーズ』の監督、いや、報道記者といった方がいいのかもしれないが、綿井健陽について、朝日新聞が夕刊で連載している『ニッポン人脈記』のなかに紹介を見つけたのでココに載せてみます。 イラク戦争のさなか、幼い三人きょうだいが空爆で死んだ。その墓標に誰かが書いた「お父さん泣かないで。私たちは天国で鳥になりました」切ない言葉が、フリーのビデオジャーナリスト綿井健陽(わたい・たけはる)(33)の胸を突いた。 綿井は、2003年の開戦後1年半にわたってイラクを取材。膨大な映像から今年4月、戦火の中の家族を描くドキュメンタリー映画を作った。 ジャーナリストはその現場に何故行くのか、という問いにはいろいろな答があるでしょう。しかし彼らがそこでしか写す事のできない映像や写真、あるいは、そこで実際に見て書かれた記事や打電された電文の中で真実を伝えようとしてきたことは共通しているに違いないと思います。 『リトルバーズ』というフィルムを構成している映像は、文字通り命がけの現場で撮られたものです。『あなたはここに何をしに来たんだ。』という、破れかぶれな質問をアメリカ兵にぶつけるカメラマンの発言には、ミサイルが撃ち込まれた現場に一緒にいて、そこにいる人たちの姿をを見てしまった人間のこらえきれない怒りを感じたのは、ぼくだけではないと思います。 歴史の現場での真実を求める情熱、崩壊する国家の姿を報道するというヒロイズム。それだけではこのこの発言は生まれないし、この映画もできなかったのではないでしょうか。 ぼく達の前に差し出されたあの映画は『どうしてこんなことを』という怒りと哀しみを表現しているとボクは思いました。それは、社会が報道に求めているとされる客観的事実性を超えた、主情的、主観的な問いかけとして迫ってきました。 「正義のミサイルが他でもないこの子供たちの上に撃ち込まれたことをどう考えますか?」 戦争という現場を向こう側から見てしまったに違いないカメラマン綿井健陽が、そう問いかける厳しさをぼくは受け取りました。そして、あなたに問かけたいと思いました。 「あなたはどう考えますか」 アメリカから戦車に乗ってやってきたあなた。 異国の食事に驚いて笑顔をふりまいている自衛官のあなた。 学校の体育館でこのフィルムを見ているあなた。 TVが戦争を実況中継し、ミサイルの軌跡を打ち上げ花火のように眺めるようになった現在、ミサイルが破壊するものがなんであるのか、想像力の真価が問われているのではないでしょうか。 あのフィルムのブック版として出版されたのが、この「リトルバーズ-戦火のバグダッドから」(晶文社)です。 本の中でも、戦場の哀しい家族や少女の瞳が印象的です。綿井がいのちがけで写真にとらなければ、我々はこの表情を見ることができないのです。もちろん、見て何を考え、何をするのか。我々自身の問題です。 ページを繰るたびに少女の眸は問いかけてきます。 「あなたはどう考えますか?」 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 脅しのような問題提起をしながら、ぼく自身が何をしたのか。その後の暮らしを振り返ると、ほとんど批判を免れない体たらくです。しかし、あの「アルカイダ=ビン・ラディン」ウォンテッドに始まる「イラク侵攻」騒ぎが、当時の高校生たちにとって「海の向こうで戦争が始まる」他人事だったことにいら立ちながらの案内でしが、自分自身の中にも何かをため込んでいたようです。 「イラク侵攻」ペテンシリーズ第4弾は、思い出の「リトル・バーズ」でした。 週刊 読書案内 綿井健陽「リトルバーズ 戦火のバグダッドから」(晶文社)2019-no22-233 発行所 The astigmatic bear`s lonely heart club 発行日 2019/04/30 追記2020・02・06 「イラク侵攻」ペテン師シリーズ第1弾「記者たち」・第2弾「バイス」・第3弾「バグダッド・スキャンダル」はタイトルをクリックしてみてください。 ボタン押してね! にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.12.04 08:32:25
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