ゴジラ老人シマクマ君の日々
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シマクマ君
シマクマ君のゴジラブログへようこそ。今日は図書館、明日は映画館。あれこれ、踏み迷よった挙句、時々、女子大生と会ったりする。大した罪は犯さない、困った徘徊老人。「週刊読書案内」・「先生になりたい学生さんや若い先生にこんな本どう?」・「映画館でお昼寝」・「アッ、こんなところにこんな…わが街」とまあ、日々の暮らしのあれこれ、いたって平和に報告しています。
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若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社・河出文庫) 何故だかわかりませんが、まあ、多分、偶然でしょうが、2018年の春の芥川賞、直木賞は二作品とも宮澤賢治がらみで不思議な感じがしました。 芥川賞は若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社)でした。 若竹さんの小説の題名は宮澤賢治の「永訣の朝」という詩の中のクライマックス、妹トシの最後の言葉の一節、詩の中では
「Ora Orade Shitori egumo」
とローマ字表記されているところですが、そのもじり?、イヤ、引用だと思うのですが、どうでしょう。門井さんの「銀河鉄道の父」はそのものズバリという感じでした。 実際にお読みになればわかりますが、若竹さんの作品は賢治と、直接的には、何ら関係はありませんでした。夫を亡くした高齢の女性が「おらおらでひとりいぐも」という生活を暮すありさまを描いた小説です。 賢治の妹トシの言葉は「この世」で生きることができなかった一人の若い女性の「一人ぼっちの死」の無念を印象させる宗教的な象徴性の高い言葉として表現されているところが眼目だと思いますが、それが、現世を生きる女性の
「一人ぼっちの生」
の姿の核心になっているところが若竹さんの意図のようです。 この作品について、ここでは詳しく触れませんが小説を支えているのは東北弁、そうです、我々のような関西在住の人間が高等学校の国語の時間、宮澤賢治の詩の一節の中で、初めて出会ったあの響きが「いのち」になっている小説と言っていいと思います。 若竹さんは、柳田国男で有名な、あの遠野の出身らしいですが、おそらく、現在では東北地方の人たちだって、この響きの言葉を日常語として使っているとは思えません。ただ、NHK的な言葉の嘘くさい、着飾った響きの奥には、この言葉の響きがあるのかもしれません。
「はだかのこころをはだかの言葉で描いた」
まあ、そういう小説だと言いえばいいのでしょうか。ぼくは「ひとりえぐも」というやわらかい言葉にこめらた、女性の決意の響きがいいなあと思いました。2018/06/03 追記2020・06・28 この作品を原作にした映画がつくらているそうです。まあ、ヤッパリ見に行くことでしょうね。ちなみに、今では河出文庫から文庫版が出ています。こんな文庫です。 門井さんの「銀河鉄道の父」の感想はこちらをクリックしてみてください。
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