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カテゴリ:映画 スペイン・ポルトガルの監督
ルイス・ブニュエル「ビリディアナ」元町映画館「ルイス・ブニュエル特集」
連休中の「イスラム映画特集」とか、「サメ映画特集」も大いに興味をそそられたのですが、どうも大入りらしいという情報をつかんでしまい、尻込みしてしまいました。 とはいうものの、これだけはと思っていたこの特集です。気付いた時には時間切れ寸前、漸くこの一本だけにはお目にかかることができました。「ビリディアナ」ですね。 60年代の映画の再上映だそうです。70年代に彼の作品は何本か見たことがあります。話は忘れてしまっているのですが、カトリーヌ・ドヌーブの「昼顔」とか、そうだ、意味不明の極致「アンダルシアの犬」もブニュエルだったはずですね。意味不明ということだけ覚えています。しようがないですね。 「今回の特集では「皆殺しの天使」が見たかったんだなあ。」 とかなんとかぶつぶつ言っていると始まりました。 モノクロの画面なのですが、悪くない雰囲気ですねえ。60年代的美少女、カトリーヌ・ドヌーブに似ているビリディアナ(シルビア・ビナル)は、修道院の生活をしているようです。 「学校を出て、修道院か?まあ、そういう娘なんかな?じゃあ、十代か?うーん、そのわりには年食ってる感じの女優さんやな。」 金持ちの伯父さんの援助で学校を出たようですが、その伯父さんが会いたがっているらしい。嫌がる少女に修道院の偉いシスターも「会ってこい」と命じています。仕方なく、田舎の町へやってきます。旅のトランクには、大きな十字架。なんか、すごいですね。 ここからの話についていけなくなりました。な、なんとその伯父さんが、この美少女に結婚を迫り始めるのです。ラモナという女中に手伝わせて、怪しげな薬まで飲ませています。 「なんなんや?この展開は?」 眠り込んだ美少女を・・・・。 「なんや、なんや、このシーンは。その程度で、何にもせえへんのんか。アカン、意味わからん。」 目を覚ました少女に、伯父さんは「犯した」とか、「あれは嘘やった」とか、「でも結婚してほしい」って、何を言ってるんでしょう。怒った少女は修道院へ帰ろうと屋敷を出て行こうとすします。見ている「オッサン」にもわからん話を、こんな少女に理解できるはずがないですよね。 「そらそうやろ。こんなわけのわからんとこ出ていくやろ。」 思っていると、伯父さんの自殺が伝えられます。 「やっぱり意味不明やな。なんで死ぬねん。これは相当わけわからんで。どうなんねん。ここから?」 遺産を引き継いだ少女は。伯父さんの隠し子だという青年と屋敷に帰って慈善事業を始めます。 「元気いっぱいやな。しかし、まあ、この取ってつけたような話は、なんなんや?どうせまた、この男が面倒くさいんやろな。」 町中の乞食を屋敷に連れてきて、世話をやき始める。食事を用意し、説教を垂れ、仕事を与え、お祈りをする。相手は盲人、小人、妊婦、ハンセン氏病患者、売春婦、行倒れ、エトセトラ、エトセトラ。 「なんか、落ち着かんなあ。何が起こるんや?」 屋敷の住人が誰も出かける。そこからとんでもないことが始まる。屋敷に残されていたルンペン・プロレタリアートたちの傍若無人。飲むわ、食うわ、タンスを引っ掻き回してウエディングドレスを着て踊りだすわ。上等な家具や食器が平気で壊されるわ。何だかわけのわからないセックスシーンまで始まる大騒ぎ。 あまりのことにポカーンと観ていると、宴たけなわのテーブルの人々が盲人のおやじを中心に横並びに座って、こっち側に娼婦と思しき女がいて、いきなりスカートをまくり上げ御開帳、全員で大笑い。 「ええーっ!これって、最後の晩餐?13人おるんちゃうの?盲人のおやじがキリスト?」 何も知らず、ようやく、帰宅した屋敷の主人たちを見て逃げ出す女たち。ところが逆上して襲い掛かる不逞の輩の狼藉シーンが映されて、悲鳴を上げるビリディアナ。 「よう襲われる人やなあ。」 危機一髪で救い出された翌日。聖少女は見事に変身します。だらしのない服装で憂いに満ちた表情の女は賭けトランプの席に着きます。カードをいじり始め、もう修道院へは帰らないのでしょう。 「修道女ビリディアナの堕落。」 総括すればそいうことかもしれません。しかし、そんなレベルの話じゃないですね。これは、どうも、すごい話ですよ。ルンペンを演じる怪優たちの「すばらしさ」というのでしょうか、リアリズムを完全にはみ出しています。 「なるほど、ルイス・ブニュエルや。やりたい邦題やんけ。ええんか、こんな映画撮って。まあ、そういう時代やったんかなあ。ルンペンはブリューゲルさながらやったしなあ。最後の晩餐であんなことするし。やっぱり、ほかのも観たかったなあ。」 久しぶりに、強烈パンチを食らった気分で歩いていると、アーケードの天井から下がった、新しい元号の垂れ幕が目に入りました。 「シラケるなあ。アカン。ナカニシススムがホンマにアホに思えてきた。」 帰って調べると、1961年のカンヌのパルムドール。ところがどっこい、ローマ教皇庁の怒りを買って上映禁止だったそうです。 「さもありなん。」 監督 ルイス・ブニュエル Luis Bunuel 製作 グスタボ・アラトリステ 脚本 ルイス・ブニュエル フリオ・アレハンドロ 撮影 ホセ・フェルナンデス・アグアヨ キャスト シルビア・ピナル (ビリディアナ) フェルナンド・レイ (伯父ハイメ) フランシスコ・ラバル (伯父の息子ホルヘ) マルガリータ・ロサーノ (女中ラモナ) ロラ・ガオス 原題「Viridiana」 1961年 メキシコ・スペイン合作 91分 2019・05・10・元町映画館no8 ボタン押してネ! にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.14 09:11:23
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