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カテゴリ:映画 イタリアの監督
ジャンニ・アメリオ「ナポリの隣人 La tenerezza」シネ・リーブル神戸
映画が始まって、タイトルが出ます。アルレタという人らしいです。歌が歌われて、字幕に「今は沈黙があるだけ」と出ました。感じのいい歌ですが、何語なのかぼくにはわかりません。こういうところが、教養のなさとが哀しいです。 「なんや、案外、元気やないか。」 アパートに帰ってきた老人ロレンツォ(レナート・カルペンティエリ)を待っていたのは階段に座りこんでいる新しい隣人ミケーラ(ミカエラ・ラマゾッティ)でした。 「コケティッシュという言葉があったな。」 老人のどこかに、彼女が潜り込む隙間でもあるかのように、すいすい近づいてくるのです。 「イヤ、ちがうな。偏屈な老人をふと心配にさせる『空気』が彼女を包んでいるんだ。」 造船所で働く夫ファビオ(エリオ・ジェルマーノ)と、二人の子供がいる隣の家族の暮らしが映ります。若い母親はミケーラです。これが実の家族たちと折れ合いない老人の新しい「家族」です。 「ちょっと、横にいてやらなきゃあ。きっとそう思っている、この爺さんは。」 破局は隣りの家族にやってきます。銃を手にして死んでいるファビオ。倒れている子供たち。病院に搬送されるミケーラ。家族だと偽って、病室に入り込み、生死の境をさまようミケーラに付き添うロレンツォ。 「父は心を許した、身寄りのない隣人に手を差し伸べただけです」 ロレンツォが叫びます。 「お前は黙れ。俺をボケ老人だと思ってかばうな」 やはり、ここでも拒絶されたエレナは、静かにその場を立ち去っていきます。 「きっと会いに来てね。」 彼女の死とともにさ迷い歩くのは老人です。やつれはてた老人が、娘の前に姿を現します。ベンチに座り込んだ老人は、差し出された手を遠慮がちに握り、それを強く握り返す娘がいます。 「誰でもはじめはそうだから・・・」 引っ越しを繰り返し、新しく住む街や、その街の人間に受け入れられないと苦しむファビオに掛けた言葉が、ロレンツィオ自身を語っていたに違いないと、ボクは思うのです。会いに行かなければ「やさしさ」には出会うことはできない。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.08.04 22:14:32
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