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カテゴリ:映画 香港・中国・台湾の監督
チャン・ジーウン「乱世備忘 僕らの雨傘運動」
ここのところ、「元町映画館はドキュメンタリー」という感じが続いています。今日は香港の2014年「雨傘運動の記録」を2階の小部屋で観ました。 2014年に香港で起こった「雨傘運動」ってご存知でしょうか。 「真の普通選挙」を求める若者たちが街を占拠した民主化運動です。警官隊から浴びせられる催涙弾に対して雨傘で身を守ったことから「雨傘運動」と呼ばれたそうです。チャン・ジーウン監督がデモの最前線でカメラを回し、その中で出会った学生らに焦点を当て、ごく普通の若者たちが「香港の未来」を探し求めた79日間の姿を記録した映画でした。 何の脚色もありません。カメラと一緒に転んでしまうリアルなハプニング。出てくる若者たちの嘘のない会話。繰り返しアップで映る警官の顔。そこに「真実」が輝いていました。 やがて敗北に終わる記録は、人によっては退屈な映像かもしれません。でも、見ていてよくわかるのです。繰り返しの毎日のようで、映像の印象が少しづつ変化します。そこでは、20代の若者たちが、生きている「世界」の変化の可能性に、自らの未来をかけていました。言葉でいうのは簡単ですが、命がけですよ。 遠くで動きがあることが伝わってきます。よどんだ空気が流れています。再び激しい動きがあります。胡椒スプレーがまかれ、催涙ガスが充満しています。走って逃げています。警官に拘束されています。少女が涙を流しています。一人、一人、写真を撮られています。しかし、写真を撮っている警官をカメラはずっと撮り続けているのです。このカメラの映像が表現するど根性の中に、カメラマン自身も「未来」を希求していることが伝わってきます。 若者たちは、冗談を言い、議論し、地面で寝ています。彼らは、自分が生きていく社会を、体を張って、でも、力むことなく、悲壮にならず、自分で作ろうとしているようです。 長い物には巻かれろとでも言っているかのような、たとえば、大学教授である「大人」の言葉に、きちんと、自分の言葉で反論するメガネの女子学生の姿は、やはり心を揺さぶるものです。こっちの、若い子の方が正しい。 映画のあと濱田麻矢さん(神戸大学・中国現代文学)のレクチャーがありました。何も知らなかった香港と中国の関係や、2014年に敗北しながら、今、再び起こっている自治と民主化を求める運動の解説を聞きました。この香港の人々の運動を理解し支持することが、「民主主義」を失いつつある、この国に生きているぼくにとって、とても大切なことだと思いました。ついでに、この国のメディアのダメさ加減を、またしても痛感したのでした。 ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.24 10:44:37
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