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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2019.08.13
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​​​​日浦勇「海を渡る蝶」講談社学術文庫
​​​​​​​​​​​​​​
 もう十年以上も昔、こんなふうに、高校生に読書案内していました。その中の一冊です。文章もその当時のものです。
​ 運動会も終わりました。朝夕めっきり冷気が立ち込めてくるようになって、秋ですね。この国の伝統文化では月であり、紅葉であり、帰る雁であるという季節です。当然!学校では読書のシーズンということになります。ははははは。
 ところで、校門を入ってすぐのところに車回しがあります。最近そこに二十匹ほどの蝶がひらひらしていることに気付いている人はいらっしゃるでしょうか。蝶といえば春のイメージなのですが、今日この頃のことです。
​​てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。

 こういう有名な詩もあるくらいです。たった一行の詩ですが題名もちゃんとあります。詩の題は「春」。作者は短詩で有名な安西冬衛​​​​ですね。

​​​​蝶の空 七堂伽藍は さかしまに​​

​ こんな俳句もあります。作者はホトトギスの俳人​川端芽舎​。名はもちろん俳号で、ボウシャと読みます。季語は蝶でやっぱり春かな?句を詠んでいる人の姿は蝶になって飛ぶと見えてくるかもしれません。これも、なかなか、いいですね。​​
 というわけで蝶は春、秋といえばトンボに決まっています。ところが九月に入って一週間ほどした頃から飛び交い始めた薄紫の小さな蝶いるのです。誰か名前を知っている人はいませんか。(なんだ知らないのか。)
​ 話は変わりますが、​安西冬衛​のこの詩はずっと気になっていました。一匹の蝶がこの列島の最北の海峡を渡っていく姿です。日本名は間宮海峡。世界地理的にはタタール海峡と呼ばれているサハリンと大陸の間の海峡です。「ダッタン」は「タタール」の漢字読みでしょう。一番狭い所で10キロに満たない幅の海峡だそうだですから、そういうことも、つまりチョウがひらひらすることも、あるかと思っていました。
 題が​「春」​だからサハリンから北の大陸に向かって飛翔している蝶のことをうたっているに違いないでしょうが、その姿を思い浮かべると、ホントかなと疑心が浮かんできます。チョウの仕業にしては、あまりに雄大、春とはいえ、北の海の様子としてはあまりに可憐だと思いませんか。​​
​​

 夏の間に​日浦勇「海をわたる蝶」(講談社学術文庫​)​という本を読みました。ぼくの疑いは完全にとけました。蝶は空を飛んで海をわたるのです。場合によっては数億匹という群をなして移動することもあるそうです。
 列島周辺の海、大阪湾や伊勢湾、琵琶湖では当たり前の移動で、なかには台風の風に巻き上げられて南のフィリピンや台湾から吹き飛ばされてくるチョウもいるそうです。飛ぶのに疲れると波間に浮かんで翅を休めることもあるというのです。あのモンシロチョウも海を渡ってやって来た種であるとわれると、ちょっと驚きの事実だと思いませんか。
 ​ナチュラル・ヒストリィ(Natural Historyという言葉があります。博物学と訳されています。大英博物館がそのオーソドックスなというか、典型的なイメージですね。
 小学校の頃、理科室に陳列された様々な昆虫や鉱物の標本、動物の剥製、ガラスのビンのホルマリンに潜んでいる気味の悪い、得体のしれない、不思議な生物を覗き込んだ記憶はないでしょうか。
 採集し標本を作り、名前を探す。新しい名前を付ける。人類の知識庫に新しい名前が一つ増える。子どもたちの好奇心を激しくひきつける。博物学とはそういう学問です。
 博物館の学芸員をしていた著者はそれに飽き足らなくなったようです。膨大な知識、物の集積を前にただ羅列しておくだけでは気が済まなかったのでしょう。

​ 発達史的見地からでないと、真に理解することは出来ないのではないか。ナチュラル・ヒストリィのヒストリィという語には、十分な重みがあるのではないか。古い博物学の内容を歴史的に意味づけ、自然史と直訳しなおすことによってその語にふさわしい内容を盛るべきではないか。​​​
​ というわけで、歴史の文脈の中に現象をおくことで、全体に対する興味を作り出すことを目論むのです。スゴイでしょ。​
​​​  悠久の地質時代にあって、もっとも最近の第四紀と呼ばれる百万年(あるいは二百万年)は、それまでの時代とは違う特殊な時代であり、当時生起した事件は、現在の世界を本質的に規定するものである。気候変動や氷河性水面変動や地表の諸事件に関する知識は、自然史に不可欠であり、ナチュラル・ヒストリィは同時に第四紀学としての性格を備える必要がある。​​
​​​ 第四紀という時代は、地球が、数億年という歴史をかけて作り出した生物自然を、最高度に複雑化させた時代である。一方で海をわたる蝶のような発展段階の高い生物種とそれらが作る生物相を生み出したかと思うと、他方では落葉樹や降雨林などにひっそりと暮らす古いタイプの種及び生物相を、抹殺することなく温存している。
 このすばらしい世界―きびしいと同時にやさしい世界を、私たちは滅茶滅茶に破壊し続けている。坂道を転がり落ちるような破壊の速度をゆるめ、多様性の復権に取り組まなくてはならない。そのためには、自然変化の本質をもっときびしく追及する必要がある。​​​
​​ こうして、博物学の魅力に取り付かれた昆虫少年は、自然史を見据える歴史家になってしまいました。「人類の文化」を振り返ることだけが歴史ではありません。地球規模の生物の歴史をナチュラル・ヒストリィとして見る歴史家だっているのです。
 人間を物差しにして縄文、弥生と調べていくのが列島文化史ですが、彼が歴史を見る時ものさしの役割をするのがだということです。
 今、目の前に飛んでいる蝶がどこから来てどこに行くのか。この列島にいる蝶のどれが元からいて、どれが海をわたってきた蝶なのか。何故北にいたはずの蝶が列島を住処とし、南の蝶が新たにこの地にやってくるのか。
 それを氷河期や、温暖期との関連で論じる。何万年というスケールで蝶相が変化するさまをさぐる。最後には当然、人間の文明が滅ぼしていく蝶たちの姿も見えてくる。
 著者によれば自然変貌の第三段階を迎えている現在の都市型自然は「砂漠型自然」だそうです。コンクリート、アスファルトで覆われた都市は蝶の目から見れば砂漠なのです。蝶は砂漠では生きて行けません。氷河期を生き延びた蝶が文明の砂漠の中で「今」滅ぼうとしているのです。

​​ 本書は1973年に出版された​​「日本列島蝶相発達史」という本のリメイク版だそうです。30年以上たっていますが、著者が発している警告は全く古びていません。1983年に亡くなった著者が現在の都市の蝶相を知ればなんというだろう、読み終えてまじめにそう思いました。(S)​​​

​追記2019・08・03​
 この本を紹介したのは十五年以上も前で、生徒さんたちはもう大人になっている。ぼくはただの徘徊ジジイになった。もう一度読み返す元気は今はない。職場の庭にあった面白い形の楠も切られてしまった。樟の葉っぱを食べるアオスジアゲハが、タバコを喫って休憩しているぼくの周りを飛び交うのが夢のように思い出されてくる。
​ 樹齢100年にならんとする大木が、葉っぱがゴミだ、駐車場の邪魔だという理由で切り倒される。「安全」「便利」「平等」、符丁のように言葉は使われて、点数が競われる時代になったが、何を育てているのか忘れた教育に未来はないだろう。学校は「いきものを育てている」場所だということが忘れられて久しい。​
 人間という生き物はたかがか80年ほどの命だが、命のすごさは100年、200年生き続ける、庭の植物が教えてくれることだってあるのだ。地面にコンクリートを張って便利を求めることは、そろそろ考え直した方がいいとおもうのだが。



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最終更新日  2022.04.07 23:30:16
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